用語解説 第81回テーマ: ガバナフリー制御

2020/09/30

天野 博之 〔(一財)電力中央研究所〕

1. はじめに

需要変動および太陽光発電・風力発電の出力変動あるいは電源の脱落等に対して,ガバナフリー制御,負荷周波数制御(LFC: Load Frequency Control),経済負荷配分制御(EDC: Economic load Dispatching Control)などの需給制御技術によって,需要と供給が釣り合うように発電機の出力調整・制御が行われ,周波数の変動が抑えられている。

2. ガバナフリー制御

ガバナとは回転機の回転速度を一定に保つための制御装置であり,蒸気タービンでは蒸気加減弁,水車ではガイドベーンと呼ばれる弁の開度を,回転速度が上昇すれば減少させ,回転速度が低下すれば増加させる。ガバナフリー運転とは,常時の回転速度変化に対して,このガバナの動作により出力を変化させる運転を指す(一般に回転速度低下時の出力増加の上限として負荷制限(ロードリミッタ)が設定される)(図1 (a))。これに対して,出力一定運転が求められるプラント(原子力など)においては,負荷制限によって常時の回転速度変化に対しては出力が変化しないようにする負荷制限(ロードリミット)運転が行われる(図1(b))。


図1 ガバナフリー運転と負荷制限運転

LFC およびEDC は,中央給電指令所からの中央制御であるのに対し,ガバナフリー制御は各発電機においてローカルに実施される。応答は需給制御において最も速く,数十秒から数分程度の変動周期の需給不均衡を吸収する役割を分担している。なお,ガバナフリー制御は比例制御であり定常偏差が残るため,標準周波数に復帰させる役割はLFC 等が担うこととなる。

現状,ガバナフリー制御は火力発電・水力発電によって行われているが,将来的には同様の制御を太陽光発電・風力発電あるいは蓄電池等で実施することも期待される。

【電気学会論文誌B,137巻,12号,2017に掲載】