用語解説 第83回テーマ: PSS(電力系統安定化装置)

2020/09/30

伊藤 秀之 〔富士電機(株)〕

1. はじめに

系統事故等のじょう乱時に,同期発電機の励磁を迅速かつ適切に制御することで出力電力の過渡動揺(発電機相差角の動揺)を抑制することができる。そのためにAVR(自動電圧調整装置, Automatic Voltage Regulator)を含む励磁系の応答を高めた超速応励磁方式が採用されている。しかしながら,速応性を高めていくと,動揺の第一波は抑制できるものの第二波以降の減衰が悪くなって振動が長時間継続する弱制動現象が発生する傾向があり,場合によっては振動が増大して脱調に至ることもある。

2. PSS による電力動揺の制動力向上

この弱制動現象を抑制するために励磁を動的に調整し,電力動揺の減衰性(制動力)を高める機能を持つPSS(電力系統安定化装置,Power System Stabilizer)(1)をAVR に付加する方策が広く適用されている。図1 にPSS 装置の概要を示す。本装置は電力動揺ΔPを検出する代表的なΔP形と呼ばれるものであり,ΔP検出装置で検出したΔPに対して補償装置で適切な利得と位相補償を施して補助信号を作成しAVR の入力に加算して励磁を動的に制御することで,動揺を減衰させる制動トルクが発生するようにしている。


図1 PSS装置の概要(ΔP形)

なお,検出信号としてΔP の代わりに発電機回転数偏差Δω を用いるΔω 形もある。減衰効果を示す動揺周期がΔP 形と異なることから,広範囲の動揺周期に対応するために両方を組合せるΔP +Δω 形も用いられるようになっている。

文 献

(1) 電力系統安定化システム工学,電気学会 (2014)

 

【電気学会論文誌B,138巻,2号,2018に掲載】