用語解説 第84回テーマ: エネルギーハーベスティング

2020/09/30

三柳 洋一 〔関西電力(株)〕

1. はじめに

エネルギーハーベスティング(EH)技術とは,周りの環境から微小なエネルギーを収穫(ハーベスト)して電力に変換する技術であり,別名「環境発電技術」とも呼ばれている。光・熱(温度差)・振動・電波など様々な形態で環境中に希薄に存在するエネルギーを利用するEH 技術は,得られる電力は微小であるが,電源配線や電池の取り換え,充電,燃料補給なしで長期間にわたって電力供給が可能な電源として,ユビキタスネット社会やあらゆるものがインターネットにつながるモノのインターネットIoT(Internet of Things)の実現には必須の技術といわれている。

2. EH 技術について

環境中のエネルギーの存在形態が様々であるために,それらを電気エネルギーに変換する技術も多様である。したがって,ひとくちにEH 技術といっても,その中には様々な技術が含まれている。具体的には,表1 に挙げたような技術が各種研究開発の対象となっている。

表1 主なEH技術

環境中のエネルギー EH技術
可視光(太陽光など) 各種太陽電池
力学的エネルギー 電磁誘導,静電誘導,圧電発電など
熱エネルギー 熱電発電,熱磁気発電など
電波エネルギー レクテナ
その他 バイオ燃料電池,微生物燃料電池など

EH 技術による電源を適用した製品としては,古くは電波エネルギーを利用した鉱石ラジオがあるが,機器での消費電力の低下にともなって用途が広がり,現在では太陽電池で作動する腕時計や電卓が広く知られている。これらはいずれもスタンドアロンで作動するものであるが,今世紀に入って無線技術における低消費電力化の進展により,無線ネットワークの自立電源駆動が可能となった。

環境から得られるクリーンな電力と低消費電力化が進む無線技術によるIoT の実現に向けて,EH 技術のさらなる発展に期待が寄せられている。

文 献

(1) エネルギーハーベスティングコンソーシアム ウェブサイト http://www.keieiken.co.jp/ehc/about/index.html
(2) 季報エネルギー総合工学,Vol.40, No.3 (2017)

【電気学会論文誌B,138巻,3号,2018に掲載】