用語解説 第85回テーマ: 保護リレーシステム(全体)

2020/09/30

福島 将太 〔東芝エネルギーシステムズ(株)〕

1. はじめに

電力系統は,発電機,変圧器,送配電線および開閉機器などの電力設備によって構成されており,発電所から需要家まで電力を供給する。この電力系統は発電(作る)・流通(送る)・消費(使う)まで電気的に一体となっており,電力設備への自然災害などによる事故が電力系統全体へ影響を与えることとなる。

2. 保護リレーシステムの役割

保護リレーシステムの構成例を図1 に示す。保護対象とする電力設備の電圧と電流を入力するための計器用変圧器および計器用変流器,入力された電圧および電流によって保護対象の事故を正確に検出する保護リレー本体と,保護リレーの遮断指令によって遮断する遮断器によって保護リレーシステムは構成される。


図1 保護リレーシステムの構成(例)

保護リレーシステムの主な目的は,電力系統の事故や異常を直ちに検出し当該箇所の電力設備を最適な切り離しなどの制御を行うことで,「停電時間の極小化や公衆安全および電力設備の損傷防止」,「電力系統擾乱の波及による大規模停電を防止」することである。電力系統の事故を確実に検出するために「高感度かつ鋭敏」にすることを要求される反面,絶対に「誤検出・誤開閉しない」ようにする高性能・高信頼度な機能が求められる。このため,電力系統の構成変更や電力設備の大容量化などが生じても普遍的に対応していくことが必要不可欠である。

文 献

(1) 大浦好文,他:「保護リレーシステム工学」,電気学会 (2002)
(2) 電気学会:「保護リレーにおける通信技術利用技術の現状と高度化」,電気学会技術報告,No.1276 (2013)

【電気学会論文誌B,138巻,4号,2018に掲載】