用語解説 第86回テーマ: 気象予報モデル(数値予報モデル)

2020/10/01

大竹 秀明 〔(国)産業技術総合研究所〕

1. はじめに

近年,太陽光発電や風力発電の数時間から数日先の出力予測において,気象予報モデルが利用される。気象予報モデルは物理モデルであり,気圧や温度,風といった気象要素を流体力学の運動方程式と熱力学の方程式で記述する。この計算プログラム群を数値予報モデルとも呼ぶ。

2. 気象予報モデル

図1 に気象予報モデルの概念図を示している。運動方程式は時間・空間に関する微分方程式で記述されている。時間変化項を差分化し,数値積分することで将来の大気状態を予測する。気象予報モデルは,大気を3 次元空間で格子点に分け,その格子点1 つ1 つにおいて各気象要素を予測するモデルである。水平格子間隔を数km~数十km 程度とり,鉛直方向にも数十層に分けて数秒から数分毎に予測計算を行う。予測計算を実行するためには,大気の初期状態を表したデータセット(初期値)と境界条件が必要となる。


図1 気象予報モデルの概念図(気象庁HP(1)より引用)

地球上には大気のほか,海洋,陸地(地形)が存在し,大気中には水蒸気や雲が存在するため,モデルにはこれらの要素も取り込まれている。風力発電の出力予測に必要な風の予測は,風の方向成分を東西・南北,及び鉛直方向に分けて計算を行う。太陽光発電の出力予測に必要な全天日射量は下向き短波放射量とも呼ばれ,放射過程の中の短波放射過程において計算される。気象予報モデルの中では直達日射量と散乱日射量を分けて計算する。

気象予報モデルの利用は,電力システムの安定的,効率的な運用のためにも再生可能エネルギー(風力発電や太陽光発電)の出力予測の基礎データとして不可欠である。

文献

(1) 気象庁HP:「数値予報とは」,http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-3-1.html

【電気学会論文誌B,138巻,5号,2018に掲載】