用語解説 第90回テーマ: 発電機起動停止計画問題(UC)
2020/10/01
渡辺 雅浩 〔(株)日立製作所〕
1. はじめに
発電機起動停止計画問題(UC:Unit Commitment problem)は,例えば「考察期間内で適切なレベルの供給予備力を確保しつつ系統の電力需要を満たし,かつ期間内の総運転費を最小にするような発電機の起動停止パターンを決定する問題」のように定義される(1)。
2. 問題の定式化と解法
この問題は,多くの等式・不等式制約を含む組合せ最適化問題として定式化され,その多くはNP 完全問題となる。例えば,次のように定式化される(1)(2)。
- 目的関数:(発電機の総運転費)=(燃料費)+(起動費)
- 制約条件:需給電力量のバランス制約,各発電機の供給電力量上下限制約,運転予備力制約,発電機最小運転時間制約,停止時間制約,同時起動禁止・起動停止回数制約
大規模の電力系統に対してこれらの問題を解く場合,膨大な計算量が必要となることが多く,これまでにさまざまな数理計画アルゴリズムによる解法が検討されている。例えば,動的計画法,分枝限定法,ラグランジュ緩和法,メタヒューリスティック手法(NN,GA,TS,PSO など)の適用が検討されている。ただ,最近は太陽光発電の大量導入や電力自由化が進み,考慮すべき事項が増加していることからさらに複雑な問題となりつつある。
発電機起動停止計画を支援するシステムは,中央給電指令所などの業務で活用されており,運用コスト低減に貢献している。発電機起動停止計画のイメージを図1 に示す。
図1 発電機起動停止計画イメージ
文 献
(1) 佐々木博司,他:「ニューラルネットワークによる発電機起動停止計画問題の一解法」,電学論B,Vol.111, No.7 (1991)
(2) 大川健太・森 啓之:「ハイブリッドメタヒューリスティクスによる非線形燃料コスト関数を考慮した発電機の起動停止計画」,電学論B,Vol.129, No.12, pp.1567-1575 (2009)