用語解説 第91回テーマ: アグリゲーション(Aggregation)

2020/10/02

田邊 隆之 〔(株)明電舎〕

1. はじめに

変動性電源の急激な拡大や電力完全自由化の開始を背景に,DR(デマンドレスポンス)やVPP(仮想発電所)が注目を集めている。経済産業省では,2016 年1 月にエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)検討会が立ち上がり,需要家が保有する分散エネルギーリソース(DER)の有効活用に向けて,制度面と技術面の両面からの議論が進められている。また同時期よりVPP 構築実証事業が開始され,DR やVPP の技術的な実現性,有効性の検証が進められているところである。「アグリゲーション」とは「集約する」の意であり,電力・エネルギー分野ではDER を集約する意として用いられている。

2. DR およびVPP の意義

変動性電源の大量普及や電力自由化により,電力系統の運用は不確実性が増すと共に運用・制御の自由度が低下する懸念があり,確実かつ安価に,透明性を確保しつつ調整力を確保することが求められており,基幹電源に頼っていた調整力を需要化側にも求めていくことが有望と考えられている。一つ一つが小さな制御資源であってもアグリゲーションすることにより価値が高められることが期待されている。

3. アグリゲーションの階層化

VPP が想定するDER は分散型電源,蓄電池,電気自動車と様々であり,広義にはDR も含まれる。VPP 構築実証事業ではDER を直接集約する「リソースアグリゲータ」と,これらのアグリゲータを束ねる「アグリゲーション・コーディネータ」による階層化された構造が想定されている。


図1 VPPのアグリゲーション

4. おわりに

DER を有効に活用していくためには,確実な調整力として見込めるだけの制御・運用技術が重要であり,需要家への動機付けとして収益化の仕組みも重要となる。これらを現実のものとしていくためには,技術論だけではなく制度や電力市場の設計など広範な検討・議論が必要であり,様々な検討が学術的な検証を伴って進められることが期待される。

【電気学会論文誌B,138巻,10号,2018に掲載】