用語解説 第92回テーマ: 電気自動車向け急速充電器

2020/10/02

石田 隆張 (明星大学)

1. はじめに

電気自動車(Electric Vehicle,以下EV)を利用時に,バッテリー残量がほとんどなくなった場合,あるいは業務用にEV を頻繁に利用する場合を想定して開発された装置が急速充電器である。EV に搭載されている電池の充電方式の標準化に関し,IEC 61851 シリーズでその一般要件,充電ステーション,そして充電制御通信が規定され,IEC 62196シリーズで車両カプラ(充電コネクタ)が規定されている。

充電方式には急速充電のほかに普通充電がある。普通充電と急速充電の大きな違いは電力系統から供給される交流を電池の直流に変換する際に,普通充電は車両搭載のチャージャーで変換を行っている一方で,大電力を扱う急速充電はその変換を車両の外で行っている点である。

2. 急速充電装置の主回路

図1 に電力線(交流200V,3 相)から電力供給を受け,直流変換の後,電気自動車の車載電池を充電するまでの一例の回路を示す。回路は電力系統側からコンバータ・インバータ,高周波絶縁トランス,整流回路からなる構成となっている。コンバータ・インバータの部分では三相交流200Vを一度直流350V に変換した後に,高効率昇圧のために矩形波交流に変換する。その後,高周波トランスで昇圧した交流電力の整流・平滑化を行い,充電コネクタを介して車載電池に充電を行う。現在,走行距離が500 km 以上の電気自動車を実現するためには長くとも15 分程度で満充電を完了させる,とのニーズがある。このために新世代の電池向けに「超急速充電」という方式が開発されていて,本記事執筆時点では350 kW の容量を持つ超急速充電装置の製品化が発表されている。


図1 急速充電器の主回路(1)

文献

(1) 「移動体エネルギーストレージシステムとその応用」,電気学会技術報告,第1380 号 (2017)

【電気学会論文誌B,138巻,11号,2018に掲載】