用語解説 第97回テーマ: バイパスダイオード

2020/10/05

新家 正之 〔中部電力(株)〕

1. はじめに

バイパスダイオードとは,太陽電池モジュール(以下モジュールと略す)に組み込まれたダイオード素子である。

図1 に示すとおり,モジュール内には光起電力効果を利用して発電する太陽電池セル(以下セルと略す)が直列に接続され,通常時はこの直列回路に発電電流が流れている。バイパスダイオードは,セルの直列回路と並列に接続され,影や故障等の影響で発電ができなくなった回路をバイパスさせる働きがある。


図1 太陽電池モジュール

2. バイパスダイオードの動作原理

バイパスダイオードは,順方向電圧を印加した時に電流が流れる半導体素子である。

バイパスダイオードに接続するセルの直列回路はクラスタという。図1 に示すとおり,クラスタ内のすべてのセルが発電中であるとき,バイパスダイオードには逆方向電圧が印加され,発電電流が流れることはない。一方,クラスタ内のセルが,影や故障等により発電ができなくなると,セルは抵抗体となって発電電流を消費し,クラスタ端子間で電圧低下(発電時は電圧上昇)が生じる。このときバイパスダイオードには順方向の電圧が印加され,発電電流はバイパスダイオードを流れ,発電のできないセルを含むクラスタをバイパスすることができる。抵抗体となったセルに電流が流れるとセルの加熱が生ずるが,バイパスダイオードが動作し,発電電流の迂回路ができることで,セルの加熱を防止することができる。バイパスダイオードは,太陽光発電の安全性確保の面で重要な働きを有している。

【電気学会論文誌B,139巻,4号,2019に掲載】