用語解説 第98回テーマ: 海洋温度差発電実証設備

2020/10/05

福島 将太 〔東芝エネルギーシステムズ(株)〕

1. はじめに

沖縄21 世紀ビジョン基本計画で示された低炭素島しょ社会の実現に向け,沖縄の地域特性に合ったクリーンエネルギーの地産地消による環境負荷の低減を図るため,海洋エネルギーの研究開発を沖縄県久米島の海洋温度差発電実証設備(図1)にて促進している。


図1 海洋温度差発電実証設備

2. 海洋温度差発電実証設備の役割

海洋温度差発電の原理は図2 に示す通り,太陽からの熱エネルギーにより温められた表層海水を利用して低沸点の作動流体(アンモニアや代替フロン)を沸騰させ蒸気にし,タービンを駆動して発電を行う。蒸気となった作動流体は,海洋を循環する冷たい海洋深層水を利用することで液体に戻り,発電に再利用するものである。


図2 海洋温度差発電の原理(1)

海洋温度差発電は,表層海水と深層海水の温度差が年間平均20℃ある亜熱帯,熱帯地域に適用可能であり,沖縄周辺の他,小笠原諸島や黒潮流域が該当する。

実証設備では,天候や海水温の変化に伴う発電量等を計測するとともに,安定した出力が得られる海洋温度差発電技術の実証試験を行い,将来の実用化や発電に利用した後の海洋深層水の二次利用について調査・検討を行っている。

沖縄における温度差発電の導入ポテンシャルは,離岸距離30km 以内で2,797MW,離岸距離制限なしでは70,992MWであり,現在の沖縄の発電設備容量が約2,000MW のため,沖縄県全域をカバーできるポテンシャルを持つ。完全商業化した際の発電コストは50MW 級で8~13 円/kWh となり,既存の発電方式と比較して安価となると算定する。

文献

(1) (株) ゼネシス:「沖縄県海洋温度差発電実証設備」, http://otecokinawa.com/index.html

【電気学会論文誌B,139巻,5号,2019に掲載】