用語解説 第100回テーマ: デジタルグリッド

2020/10/05

高橋 広考 〔(株)日立製作所〕

1. はじめに

デジタルグリッドTM とは,「情報を電力制御用半導体装置に取り込むことで,アクティブに電力潮流を制御する」という新しい電力システムの概念である(1)。このシステムのキーデバイスには,電力潮流を複数の電力系統に流すデジタルグリッドルータTM(以下,DGR)や,同期系統の中で電力機器に外部信号を加えてルータと連携制御をさせるデジタルグリッドコントローラTM(以下,DGC)などがある。

2. デジタルグリッド導入のメリット(2)

(1) 再エネの主電源化

電力系統を複数のセルに分割し,各セル間をDGR で接続する(Fig.1)。それぞれのセルにはストレージを設け,再生可能エネルギー電源による発電エネルギーを地産地消すると共に,余剰分を他のセルへ融通する。


Fig. 1.     Configuration of digital grid(2).

(2) グリッドの堅牢性の向上

DGR でセル間を互いに接続するので,始点セルから終点セルへの送電経路は無数にあり,ある経路が故障しても別経路を確保できる。

(3) デジタル電力取引の実現可能性

送電電力は,DGC により「発電源」「配信ルート」「ストレージデバイス」「最終ユーザー」等の認証情報がタグ付され,DGR のルーティング機能で伝送される。送電電力ごとにトランザクションを追跡でき,発電電力の源泉を確認できるようになれば,カーボン取引やグリーン認証などが実現できる。

(4) エネルギーの時間的価値の安定化

各セルに設けたストレージを,需給状況等に応じて充放電し,これを市場で取引することにより,従来の需給アンバランスに起因する電力取引価格の大きな変動を回避できる。

文献

(1) 東京大学阿部研究室HP http://www.digitalgrid.t.u-tokyo.ac.jp/d-grid.html
(2) デジタルグリッドコンソーシアムHP http://www.digitalgrid.org/jp/

【電気学会論文誌B,139巻,7号,2019に掲載】