用語解説 第105 回テーマ: アンサンブル予報

2020/10/06

山口 浩司 〔(一財)日本気象協会〕

1. はじめに

前日の供給計画において太陽光発電出力などを予測するためには,数値予報モデルを用いて日射量などの気象要素を事前に予測する必要がある。数値予報とは,物理学の方程式により,現在までの観測を基にして,将来の大気の状態をコンピューターで計算する技術である。数値予報の誤差の要因としては,大気自身の持つ性質や,観測データの不足,数値予報モデルの限界などが挙げられている。このような誤差の拡大を事前に把握するため,アンサンブル予報という数値予報の手法が導入されている。

2. アンサンブル予報

アンサンブル予報は,初期状態にわずかに異なる摂動を与えて複数の数値予報を行い,その結果を統計的に処理することで,不確定さを考慮した確率的な予測を可能にするものである。

アンサンブル予報から得られた台風進路の5 日予報の例を図1 に示す。通常の単一予報(青色の線)だけでなく,複数の予報(橙色の線)を行うことで,予測の不確定さを統計的に表現し,考慮することが可能となる。


図1 台風進路のアンサンブル予報の例(1)

自然変動電源である再エネの出力予測値には相応の誤差が含まれるため,アンサンブル予報を用いた確率的な情報を効果的に利用するための研究が各所で実施されている。

文 献

(1) 気象庁:「アンサンブル予報」,https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-3-8.html

【電気学会論文誌B,139巻,12号,2019に掲載】