用語解説 第106 回テーマ: N-1 電制,ノンファーム型接続

2020/10/08

小海 裕 〔(株)日立製作所〕

1. はじめに

地球温暖化対策としてCO2 削減のために再生可能エネルギー源の導入が重要である。現在日本では,需要地に近い太陽光発電が主流であるが,さらなる再生可能エネルギー源の導入のために,稼働率が比較的高いと期待される洋上風力発電などの遠隔地の再生可能エネルギー源の利用が期待される。一方で,再生可能エネルギー源の導入量の増加により送配電線で混雑が発生するおそれがある。そこで,電源の稼働率を上げるために,N-1 電制とノンファーム型接続という新たな方式が議論されている(1)(2)

2. N-1 電制

系統信頼性の観点から,N-1 故障(単一設備故障)発生時でも,安定に送電可能な電力を運用容量と呼び,この運用容量以下になるように平常時には送電電力を抑えて運用する。一般に電圧階級が低い系統は放射状の2 回線が多く,落雷などにより1 回線が停止すると,残りの回線に2 倍の電力が流れるため,送電線の温度上昇により決まる容量に対し,運用容量を50%以下に設定している。

これに対し,N-1 故障発生時に瞬時に発電を制限(電源制限=電制)することで,平常時に運用容量を超える送電電力を許容する方式がN-1 電制と呼ばれている。保護リレー装置等による送電線の故障発生検出や過負荷発生検出を行い,短時間に電制し過負荷を防止する方式である。

3. ノンファーム型接続

送電設備の運用容量と想定される送電電力との差に空きがあるときに,送電系統アクセスを認める電源接続方式をノンファーム型接続と呼んでいる。発電前日と当日に,発電事業者は発電計画を一般送配電事業者へ提出する。一般送配電事業者は送電設備に混雑が発生するか判断し,混雑発生するおそれがある場合,必要抑制量を発電事業者へ通知し発電計画が見直しされる。これらの手順を繰り返し,最終の発電計画が決定される。ノンファーム型接続の電源は,決められた出力上限に従って当日の発電を行う。

4. ま と め

これらの新方式の詳細については今後決定される。

文 献

(1) 電力広域的運営推進機関:広域機関における「日本版コネクト&マネージ」の検討について (2018-12-26)
(2) 広域系統整備委員会事務局:流通設備効率の向上に向けて (2019-8-5)

【電気学会論文誌B,140巻,1号,2020に掲載】

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