用語解説 第107 回テーマ: 全固体電池

2020/10/08

松久 光儀 〔関西電力(株)〕

1. はじめに

二次電池は,「電極」と「電解質」で構成されており,電極内の活物質に含まれるイオンが電解質中を移動することで電極間に電子の流れを作り出す。これまでの二次電池は,電解質に液体を使用しており,液漏れが発生するおそれがあった。また,リチウムイオン電池の場合は,有機電解液を用いているため,発火などの危険性があった。全固体電池は,この電解質にイオン伝導率の高い特殊な固体物質を利用することで,信頼性と安全性を向上させるとともに,電池構成の簡略化などによって高エネルギー密度化を実現可能である。

2. 全固体電池の仕組み

全固体リチウムイオン電池を例にとり,その構造を図1 に示す。固体電解質層が,活物質同士の接触を防ぐセパレータの役目も果たす。電池全体が固体材料で構成されることから,図2 に示すように,気相法を用いて薄膜を積層することで電池を構成することができる(薄膜型)。また,微粒子の積層により電池を構成することもできる(バルク型)。


図1 従来,全固体リチウムイオン電池の構造比較


図2 薄膜型全固体電池の模式図

3. 全固体電池の特性

信頼性・安全性を確保しつつ,高エネルギー密度化が実現でき,また,液体を閉じ込める構造体も不要となるため形状が比較的自由にできる。これらのことから,より薄型や曲げを許容できる電池が製造可能となり,これまで以上に様々な用途で使用されることが期待される。

【電気学会論文誌B,140巻,2号,2020に掲載】