用語解説 第108 回テーマ: バーチャルパワープラント(VPP)

2020/10/08

山野 博之 〔富士電機(株)〕

1. はじめに

これまでの電力システムは,基本的には需要を所与のものとして,需要に合わせて供給を行うという形態が採られてきた。しかし,東日本大震災に伴う電力需給のひっ迫を契機に,従来の省エネの強化だけでなく,電力の需給バランスを意識したエネルギーの管理を行うことの重要性が強く認識された。こうした動きと並行して,太陽光発電や家庭用燃料電池などのコージェネレーション,蓄電池,電気自動車,ネガワット(節電した電力)など,需要家側に導入される分散型エネルギーリソースの普及が進んだ。

このような背景から,大規模発電所(集中電源)に依存した従来型のエネルギー供給システムが見直されるとともに,需要家側のエネルギーリソースを電力システムに活用する仕組みの構築が進められている。

2. バーチャルパワープラント(VPP: Virtual Power Plant)

需要家側エネルギーリソース,電力系統に直接接続されている発電設備,蓄電設備の保有者もしくは第三者が,そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流も含む)することで,発電所と同等の機能を提供する。この仕組みは,あたかも一つの発電所のように機能することから,「仮想発電所:バーチャルパワープラント(VPP)」と呼ばれている。

逆潮流とは,自家発電を所有する需要家が,消費電気よりも発電電力が多くなった場合に,余った電力を電力会社線側に戻るように流すことである。また,需要家とエネルギーリソースが同じ場所にない場合は,直接電力を電力会社に流すこともある。

3. ま と め

電気は「貯蔵できない」という性質を持つため,常に需要と供給をバランスさせる必要がある。そのため,需要に合わせて供給することや,瞬時瞬時の需給の変化に対応することが重要となる。このような需給バランスを保つ役割は,これまで主に大型の発電機の稼働によって担われてきたが,ここに,分散側エネルギーリソースを用いたVPP などを活用することが期待されている。

文 献

(1) 経済産業省資源エネルギー庁:HP「VPP・DR とは」,https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html

【電気学会論文誌B,140巻,3号,2020に掲載】