用語解説 第116 回テーマ: 仮想同期発電機制御インバータ

2020/11/06

中島 達人 (東京都市大学)

1. はじめに

再生可能エネルギーの導入が進んでいけば,電力系統の需給バランスを保つため,火力発電などに用いられる同期発電機を停止することが考えられる。再生可能エネルギーの多くは,パワーエレクトロニクス機器であるインバータを介して系統連系されており,回転機である同期発電機が持っている慣性や同期化力といった特性は備えていない。このため,再生可能エネルギーが増加すると,送電線への落雷などの系統事故時に,系統が不安定になるのではないかという課題が提起されている。この再生可能エネルギー大量導入に伴う系統安定度低下という課題への解決方策の一つとして,仮想同期発電機(VSG; virtual synchronous generator)制御インバータが提案されている。

2. 仮想同期発電機制御インバータのしくみ

仮想同期発電機制御インバータの構成例を図1 に示す。また,同期発電機の動特性を示す動揺方程式を(1)式に示す(M:慣性定数,D:制動定数,ωn:定格角周波数,δ:発電機内部相差角,Pm:機械入力,Pout:電気出力)。



図1 仮想同期発電機制御インバータの構成例

この動揺方程式を伝達関数を用いて表せば(2)式となる。

仮想同期発電機制御インバータでは,この伝達関数を制御系に組み込み,インバータの出力電力の指令値Pm と検出値Poutの偏差から,出力電圧位相角の指令値δref を求める。系統事故時の仮想同期発電機制御インバータは,出力電力を自動的に変動させて,系統周波数の動揺や,連系されている系統の電力動揺を抑制する応答を示すので,同期発電機と同様の系統安定化効果をもつものと期待されている。

【電気学会論文誌B,140巻,11号,2020に掲載】

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