用語解説 第117回テーマ: 核融合発電

2020/12/08

中村 一也 (上智大学)

1. 核融合発電とは

核融合発電は化石燃料を必要としないため次世代の発電方式として期待されている。核融合発電では核融合反応を用いる。核融合反応とは,2 つの軽い原子核が結合してより重い原子核を形成する現象である。例えば,プラズマ状態にある重水素(Deuterium) と三重水素(Tritium) が反応すると,ヘリウム(Helium) が生成され同時に中性子(neutron)が放出される。次の反応式で表される(1)

この中性子がプラズマ空間を取り囲むブランケット(核融合炉の内壁)に衝突してブランケットを加熱する。ブランケット内部には冷媒が流れており,これにより反応熱を炉外に取り出し,汽力発電させる方法が現在計画されている核融合発電である(2)。核融合発電の特徴として以下の3 点が挙げられる。

  • 発電に必要な燃料は海水から取り出せる
  • 発電時に二酸化炭素を排出しない
  • 核融合反応は燃料や電源を切れば停止する

上記の特徴から日本ではエネルギー資源を輸入に頼らず,地球環境に優しく,電気エネルギーを安定に供給する将来の発電方法の一つとして考えられている。

2. 核融合炉の研究開発動向

現在,核融合エネルギーの実現性を研究するための国際プロジェクトとして国際熱核融合実験炉(ITER) 計画が進められている。ITER 計画は核融合実験炉の開発である。参加国は日本,欧州,米国,ロシア,中国,韓国,インドである。ITER 計画では実験炉にてプラズマ実験を行い,計画が順調に進めば,原型炉,実証炉と続く。運転開始が2025 年,核融合運転が2035 年の予定である(3)。また日本では,このITER 計画と並行して日本と欧州が共同でJT-60SA 計画も進められている。JT-60SA 計画はITER の技術目標達成のための支援研究,原型炉に向けたITER の補完研究,核融合研究開発の人材育成が目的とされている。この他にも日本では独自の大型ヘリカル装置計画も進められている。

3. おわりに

核融合発電はエネルギーを安定に供給する究極の方法として全世界で盛んに研究が行われている。研究分野が電気工学だけでなく多岐にわたる分野のため,各分野での技術革新が望まれている。

文 献

(1) 関 昌弘:核融合炉工学概論,日刊工業新聞社 (2001)
(2) 岡崎隆司:核融合炉設計入門,丸善プラネット (2019)
(3) 文部科学省HP ITER 計画の概要

【電気学会論文誌B,140巻,12号,2020に掲載】