用語解説 第119回テーマ: デジタルツイン
2021/02/04
川村 智輝 〔(一財)電力中央研究所〕
1. はじめに
デジタルツインとは,現実世界の対象物と対になる双子(ツイン)をサイバー空間上に構築し,モニタリングやシミュレーション等に用いる技術であり,IoT(Internet of Things)技術の成長に伴って,航空業界や製造業における保守や設計等への活用を中心に発展してきた。近年では,電力系統分野においても,電力系統の運用の効率化や高度化等の観点からデジタルツインの活用が期待されている。
2. 電力系統分野におけるデジタルツイン
電力系統分野におけるデジタルツインの応用例としては,発電プラントやウィンドファーム等の単位のものから,電力系統全体や系統運用を対象としたものまでいくつかの事例が存在する(表1)。
表1 電力系統分野におけるデジタルツインの例
デジタルツインの対象 | デジタルツインの機能例 |
発電プラント |
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ウィンドファーム |
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電力系統全体 |
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電力系統分野では,国外を中心にデジタルツインの検討が進んでおり,発電プラントやウィンドファームに関しては,出力の予測や異常検知,運用効率化等を目的としたデジタルツインの実用化が進んでいる(1)。これに対して,電力系統全体を対象としたデジタルツインに関しては,系統全体のモデルの同期化・標準化を目的としたもの(2),オンライン分析の高速化を目的としたもの等,いくつかの観点で検討が進められている。
国内においても,系統状態のリアルタイム監視や系統解析の精度の向上等を目的としたデジタルツインとしてRSDT(Real-time Smart Digital Twin)(3)の概念が提案されており,再生可能エネルギーの導入拡大時に生じる諸課題を解決する一つの手段として,今後の実現が期待される。
文 献
(1) GE Digital : https://www.ge.com/digital/sites/default/files/download_assets/Digital-Twin-for-the-digital-power-plant-.pdf
(2) Siemens : https://new.siemens.com/global/en/products/energy/energyautomation-and-smart-grid/electrical-digital-twin.html
(3) 北内義弘:「RSDT(Real-time Smart Digital Twin)に基づく次世代形電力系統信頼度制御システムの構想」,平成30 年電気学会電力・エネルギー部門大会,No.197 (2018-9)