用語解説 第126回テーマ: メソアンサンブル予報

2021/09/03

山口 浩司 〔(一財)日本気象協会〕

1. はじめに

アンサンブル(集団)予報については,第104 回テーマにて解説した。アンサンブル予報とは,天気予報などで使用されている数値予報モデルの不確かさや信頼度などの付加情報を得るために用いられる手法であるが,今回は,気象庁のメソアンサンブル予報について解説する。

2. メソアンサンブル予報

気象庁では,数時間から1 日先の大雨や暴風などの災害をもたらす現象を予報するために,水平解像度5km メッシュのメソスケールモデル(MSM)を運用し防災気象情報や天気予報の作成支援等を行っている。一方で,メソスケールの現象は時空間スケールが小さいことに加え,その予測精度が初期値に含まれる誤差に敏感なため,単一の(決定論的)予報で1 日程度先までの実況を捕捉することが難しい場合がある。とりわけ,災害をもたらすような局地的な集中豪雨等のメソスケール現象を時間と場所を特定して予測するには,未だ多くの困難が残されている。

そこで,アンサンブル予報を用いて,メソモデルの不確かさや信頼度などの付加情報を得るために,メソモデルと同じ領域を対象に計算して予測するメソアンサンブル予報システムが開発された(表1)。メソアンサンブル予報は,顕著現象への効率的なリスクマネジメントという点で非常に有用な手段と考えられており,気象庁では2019 年6 月よりメソアンサンブル予報システムの本運用を開始した。電力エネルギー分野でも,再生可能エネルギーの出力予測に関係する日射量予測や,需要予測に関係する気温予測などについて,メソアンサンブル予報を活用した効果的な需給運用の検討が各所で始められている。

表1 気象庁のメソ・全球アンサンブル予報の仕様(1)

 

文 献

(1) 気象庁:「主な数値予報モデルの概要」より一部抜粋 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-3-4.html

【電気学会論文誌B,141巻,9号,2021に掲載】

用語解説のまとめページ