用語解説 第128回テーマ: カーボンニュートラル
2021/11/05
山口 順之 (東京理科大学)
1. カーボンニュートラルの基本的な考え方
カーボンニュートラルは,排出が避けられない温室効果ガス(greenhouse gas, GHG)と同じ量のGHG を,「吸収」または「除去」することで,人類の活動が大気中のGHG の増減に対して影響を及ぼさない(ニュートラル,中立)ようにすることを指す。主なGHG(1)の二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)には炭素(カーボン)が含まれているため,「カーボン」ニュートラルと言われる。
2. 日本政府の2050 年カーボンニュートラル宣言
菅義偉内閣総理大臣は,令和2 年10 月26 日に開催された第203 回国会における所信表明演説について,2050 年までにカーボンニュートラル,脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した。演説では,温暖化対策は経済成長の制約ではなく,積極的な温暖化対策の実施が,産業構造や経済社会の変革をもたらし,大きな経済成長につながるという発想転換を求めた。さらに2021 年4 月には,2030 年度にGHGを2013 年度から46%削減することを目指すと表明した。
3. 様々なカーボンニュートラル技術
カーボンニュートラル社会を実現するためには,様々な技術を活用することが求められている。
電力部門では再生可能エネルギー発電や原子力発電などの非化石電源の拡大が期待されている。また,非電力部門では,エネルギーの電化,電化しきらない熱の水素化,メタネーション(methanation)や合成燃料などのCO2 利活用を進めることが必要である。
CO2 回収技術は,ネガティブエミッション技術(Negative Emissions Technologies, NET)と呼ばれ,森林がない場所への植林や海草藻場の復元・拡大のような自然の力による炭素吸収・固定を行うことのほか,DACCS(直接空気回収・貯留,Direct Air Carbon Capture and Storage),BECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage,回収・貯留付きバイオエネルギー)などの工学的技術の活用も必要とされている。
電力需要側においても,省エネの徹底,分散型資源活用のためのデジタル化・最適化,レジリエンス強化についての具体的な取り組みが必要である。