用語解説 第129回テーマ: 直流開閉装置

2021/12/10

加藤 達朗 〔(株)日立製作所〕

1. 直流開閉装置とは

複数の変換所と直流送電線路から構成される多端子送電や,洋上風力の導入量増加による直流送電システムが注目されている。一方,これらの直流送電においては,事故時の健全回線への波及防止として送電線端に直流開閉装置を設置して,事故電流を遮断する必要がある。一般に交流回路では電流ゼロ点が周期的に存在し,ゼロ点において内部の絶縁が確保できていれば大電流を遮断できるが,直流回路では電流ゼロ点が存在しないため,電路を開閉するだけは大電流を遮断できない。それを実現するために,直流開閉装置として各種遮断方式が提案されている。

2. 直流遮断技術

表1 に直流遮断器の方式と特徴の概略を示す。一つは機械式の直流遮断器であり,付加したコンデンサやリアクトルの発振現象を利用して接点間に発生するアーク電圧を電源電圧以上に上げて電流ゼロ点を作り出し,機械的な遮断器により電流を遮断する方法である。鉄道用の直流遮断器として使用されており,高電圧直流送電に向けて高電圧化を目指した開発が進められている。

表1 直流遮断器の方式と特徴

他方式として半導体式の直流開閉装置があり,半導体のスイッチング性能を利用して電流を遮断する方式である。稼働部分がなく高速な電流遮断が可能であるという反面,他方式に比べて通電損失が大きいことが知られている。さらには,機械式と半導体式を複合したハイブリッド式が提案されている。ハイブリッド式はアークレスの電流遮断が可能で通電損失が小さいという両者のメリットを有した方式であり,実現に向けた開発が進められている。

【電気学会論文誌B,141巻,12号,2021に掲載】

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