用語解説 第131回テーマ: コンセンサス予報

2022/02/08

宇野 史睦 (日本大学 文理学部 地球科学科)

1. 現在の気象予測情報の電力利用

現在,電力分野において電力需要や太陽光・風力発電量の予測などを中心に気象庁などの予報情報が利用されている。気象庁が公開している予報情報の中では,メソモデル
(MSM)などの予測値が単一である決定論的予測が高解像度かつ39~51 時間先まで予測されているため,よく利用されている。また,2019 年6 月27 日から,メソアンサンブル予報の提供を開始した。このデータは,アンサンブル手法により,同じ時刻で21 個の予測値が計算され,その複数の予測値の平均値は,決定論的予測よりも予測精度が高くなることが知られている。また,21 個の予測幅の情報から,確率予報や予報の信頼度情報として利用される。ただし,確率予報や信頼度情報は電力需要や発電量予測にどのように利用可能かは検討段階である。

2. コンセンサス予報とは

上述のアンサンブル予報は,物理モデルを用いたシミュレーションについて,その初期値に摂動(線形モデルをベースにした小さなノイズ)を与えて,異なる初期値をそれ
ぞれ気象予報モデルの入力値とすることで,複数の予報値を作成する。一方,コンセンサス予報は,物理モデルのアンサンブル予報だけでなく,他の(例えば海外の)予報機関のアンサンブル予報を併用することで,よりアンサンブル平均の予報精度を高めることを目的としたものである(グランドアンサンブルとも呼ぶ)。これは,気温や降水量などと比べて,予報が難しいものに対して実施されていることが多い。

現在,日本国内においてコンセンサス予報が利用されている予報情報は,台風の進路予報である。アンサンブル予報と比べコンセンサス予報は,予報値が単一の値となるた
め,応用分野において比較的利用が容易である。加えて,近年では,物理モデルだけでなく統計モデルも加えた,コンセンサス予報も提案されている。この場合,物理モデルと統計モデルは,単純平均か重み付け平均を行うことになるが,どのように重みを決定するかに関しては課題も多い。このような統計モデルも併用したコンセンサス予報については,特に台風の中心気圧などの強度予報などで検討が行われているなど,様々な応用分野への利活用が期待される予報手法である。

【電気学会論文誌B,142巻,2号,2022に掲載】

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