用語解説 第133回テーマ: 国際標準IEC 61850 規格

2022/04/01

高橋 竜生 〔富士電機(株)〕

1. はじめに(1)

1990 年代以降,LSI やマイクロプロセッサの技術進展に伴い,海外を中心に保護・監視制御の機能を搭載する装置のディジタル化とSAS(Substation Automation System:変電所自動化システム)の適用が拡大している。

また,変電所構内の伝送には様々な方式が適用され,SASを構成するIED(Intelligent Electronic Device)間の相互運用性に問題があった。このため,異なるベンダIED を用いて運用を可能にすることが,電力会社,ベンダ,標準化機関の共通目的となった。このような背景から,IEC 61850はSAS 用国際規格として策定された。

2. IEC 61850 規格の概要(1)(2)

IEC 61850 は,IEC の技術専門委員会(TC:Technical Committee)であるTC57 によって策定された国際標準であり,電力設備自動化に必要な通信ネットワークとシステムについて規定している。IEC 61850 は複数のPart で構成され,国際規格(IS:International Standard),技術仕様書(TS:Technical Specification),および技術報告書(TR:Technical Report)に分類される。

IEC 61850 は,SAS 内の異なるベンダIED 間の相互接続を可能するため,機能(アプリケーション)と,通信方式を分離した規格となっている。アプリケーションは通信データと通信サービスを標準化し,通信方式は既存のオープンなプロトコル(IEC,IEEE,ISO,OSI 等)を最大限適用することを基本的な考え方としている。

SAS に必要な情報データと通信サービスは,オブジェクト指向の適用により情報モデルとして規定されることで標準化されている。この情報モデルはIEC 61850-7 においてACSI(Abstract Communication Service Interface:抽象通信サービスインタフェース)として規定され,特定の通信方式に依存しないよう抽象化されている。一方,通信方式は,既存のプロトコル適用するため,情報モデルを特定の通信プロトコルに対応させる変換・対応付け(マッピング)を定義している。これはSCSM(Specific Communication Service Mapping:特定通信サービスマッピング)としてIEC 61850-8-1 とIEC 61850-9-2 に規定されている。

3. ま と め

将来のディジタル対応SAS 実現に通信利用技術のIP ネットワーク適用は欠かせないインフラであり,国際的な主流規格としてIEC 61850 の活用が期待されている。

文 献

(1) 「新しい通信技術による保護リレーシステムの設計合理化」,電気協同研究,Vol.71, No.1, (2015-7-6)
(2) “IEC/TR 61850-1 Edition 2.0 Communication networks and systems for power utility automation-Part 1: Introduction and overview” (2013)

【電気学会論文誌B,142巻,4号,2022に掲載】

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