用語解説 第136回テーマ: 故障率(FIT)

2022/07/05

鈴木 大地 〔東芝エネルギーシステムズ(株)〕

1. 故障率

近年の電力機器は,多数の部品から構成されるモジュールを直並列につなぐことで大容量/高電圧を実現しているものが少なくない。パワエレ機器などでは,多いもので1000個以上のモジュールから構成されるものもある。

このような構成の機器では,たとえそれぞれの部品の故障確率が低くても,構成物の総量が多いため,「全く壊れない」機器を作ることは現実的ではない。また,これらの故障は偶発的に発生する事象であり,試運転期間での対策や運転開始後の予防保全などで故障原因を取り除くことができない。このような場合,あらかじめ部品に与えられている故障率という確率統計的な指標にもとづいて,モジュール単位の故障では,「システムとして運転継続する」冗長設計や,「システム停止を最小限にする」信頼度設計を実施することが重要になる。

2. FIT と信頼度設計

故障率の代表的な指標として,FIT(Failure In Time)がある。これは当該部品が109 時間(10 億時間)に故障する平均回数を表し,これを用いてt 時間あたりの故障確率を以下の通り表すことができる。

P(t) = 1−exp(−FIT/109×t ) t:時間 (h)

FIT を用いてモジュールの故障確率が計算できると,運転可能時間率(アベーラビリティ),システム停止確率や停止率などの各種信頼度指標の計算が可能となる(図1)。


図1 故障率(FIT)と信頼度の関係

FIT から計算されるさまざまな指標を用いることで,製造者はシステムで要求される信頼度要件を満たすように冗長設計や予備品設計をすることができる。他方で,運用者はライフサイクルを通じた故障モジュールの総数を確率統計的に想定できるため,適切な設備管理が可能となる。

【電気学会論文誌B,142巻,7号,2022に掲載】

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