用語解説 第139回テーマ: 電力メータ情報発信サービス

2022/10/05

高橋 雅仁 〔(一財)電力中央研究所〕

1. はじめに

スマートメータでは,30 分単位の住宅の電力使用量を計測し,高頻度で遠隔から取得可能である。スマートメータデータを使った情報発信サービスでは,大量のデータから,サービスに紐づく有用な情報を,機械学習など情報技術を用いて抽出し,顧客に提供することが期待される。

2. スマートメータデータを使った情報発信サービス

サービスの例として次のようなものがある。
(1)見える化による省エネ促進
スマートメータデータを用いて,住宅内の用途毎の電力使用量を推定し,見える化することで,消費者の省エネ行動を支援するディスアグリゲーションの手法や,行動科学の知見に基づき,他世帯との使用量比較等を提示することにより,消費者に省エネ行動を促すナッジの手法がある。
(2)デマンドレスポンス
スマートメータデータを用いることで,以前よりも細かく時間帯毎の電気料金や節電インセンティブの設定が可能である。HEMS 設置住宅では,より詳細な電力データの把握や家電機器の制御も可能になる。
(3)高齢者見守り
スマートメータデータから,対象世帯の生活パターンを推定し,変化や異常の有無を監視することができる。高齢者世帯の見守りサービスとして既に実用化されている。
(4)在不在情報の活用
スマートメータデータから,対象世帯の住民の在不在を高い鮮度と高い精度で推定することが出来る。住民のプライバシーを保護しつつ,この世帯毎の在不在情報を,企業・自治体向けのサービスに活用する実証が行われている。ユースケースとしては,宅配事業の効率化や,災害時の避難計画の支援,空き家調査の支援,小売業向けの商圏分析が考えられている。

3. 今後のスマートメータデータの活用

スマートメータデータの活用は,様々な社会課題の解決や新たな価値の創造に資するため,電気事業法が改正され,認定電気使用者情報利用者等協会(以下,認定協会)の設立が準備されている。認定協会を通じて,電気事業者からデータ利用者へ,本人同意を得られた個データや,地域等で集約された統計データなどの提供・活用が進む予定である。電力データだけでなく,政府統計や地理情報,気象,携帯電話の位置情報など複数のデータの組み合わせによる新たなユースケースの創出が期待される。

参考資料

(1) 経済産業省資源エネルギー庁:「電力データ活用の在り方勉強会及び検討会」(アクセス日:2022 年6 月27 日)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/shiryo_joho/electricity_data.html

【電気学会論文誌B,142巻,10号,2022に掲載】

用語解説のまとめページ