用語解説 第140回テーマ: アセットマネジメントシステム

2022/11/07

西山 航平 〔三菱電機(株)〕

1. はじめに

託送料金制度(レベニューキャップ制度)にて,一般送配電事業者は国からの指針に基づいた事業計画を策定する。具体的には,国が示した指針に沿って,一定期間に達成すべき目標を明確にした事業計画の策定や収入上限の算定を行う。策定すべき事業計画の設備保全計画の中に,アセットマネジメント等の手法に基づく更新投資,修繕の方針が記載されており,高経年化設備更新ガイドラインにまとめられている(1)。このような背景から,アセットマネジメントシステムが着目されている。

2. アセットマネジメントシステムの概要

電力業界におけるアセットマネジメントシステムは大きく3 つの要素から構成される(図1)。
(1)EAM
Enterprise Asset Management の略で,設備情報や工事情報,並びに巡視・点検情報などを統合管理する。あらゆる資産の状態を統合管理することで,事業者の資産管理や保守を効率化できる。
(2)APM
Asset Performance Management の略で,設備状態を管理する。2023 年の託送料金制度における第一規制期間に向けて,高経年化対策が必要な9 設備のリスク量算出方法が,高経年化設備更新ガイドラインにまとめられた。設備の故障確率と故障影響度から設備状態をリスク量として算出することで,設備状態を定量化する。
(3)AIPM
Asset Investment Planning and Management の略で,設備投資計画の策定,最適化を行う。APM で算出されたリスク量を基に投資を計画し,リスク量や費用を制約として投資群を最適化する。特定のグループ毎に制約を設定することで,事業特性に沿った最適な投資計画が策定できる。


図1 アセットマネジメントシステムの構成

参考資料

(1) 電力広域的運営推進委員会:「高経年化設備更新ガイドライン」(アクセス日:2022 年8 月2 日)https://www.occto.or.jp/kouikikeitou/guidelines/files/koukeinenka_setsubi_guideline.pdf

【電気学会論文誌B,142巻,11号,2022に掲載】

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