用語解説 第142回テーマ: スマートインバータ

2023/01/06

金子 曜久 (早稲田大学)

1. はじめに

2050 年カーボンニュートラル達成に向け,電力システムでは,変動性の再生可能エネルギー電源(再エネ電源)が大量導入された場合においても,高品質な電気を安定的に供給するための技術開発が求められている。これまで,電圧や周波数をはじめとする電力品質は,時々刻々と変化する潮流に合わせて系統設備を制御することで,適切に管理されてきた。一方で,再エネ電源の導入量増加に伴う電力品質悪化への対策として,太陽光発電や蓄電池,電気自動車などのPCS(Power Conditioning System)に系統サポート機能を具備したスマートインバータ(以下,SI:Smart Inverter)の活用が期待されている。本用語解説では,SIの機能や導入状況,研究動向を概説する。

2. スマートインバータの系統サポート機能(1)

SI の系統サポート機能として,事故時運転継続機能,周波数制御機能,電圧制御機能が挙げられる(表1 参照)。加えて,系統運用者が有するDERMS(Distributed Energy Resource Management System)との通信が可能である点が,従来のPCS との大きな違いである。通信機能により,各種系統サポート機能のON/OFF や制御パラメータの遠隔更新が可能であり,再エネ電源の導入状況や系統切替時などの系統状態の変化に合わせた柔軟な制御が期待できる。

表1 スマートインバータの機能一覧

3. スマートインバータの導入状況や研究動向(2)(3)

欧米,特にハワイ州やカリフォルニア州では,段階的に機能を有効化しながら,SI の導入と活用が進んでいる。日本では,SI の実用化に向け,実証試験を実施し,系統連系要件の整備が進められている。研究動向としては,各種機能の制御パラメータの違いが系統運用に与える影響の評価
や最適な制御パラメータの決定などに関して検討されている。

参考資料

(1) EPRI : Common Functions for Smart Inverters 4th Edition (2017)
(2) 橋本 潤 他:「グリッドコード改訂に伴うスマートインバータと系統連系試験技術」,日本太陽エネルギー学会,Vol.4, No.1, pp.27-33 (2020)
(3) K. Shinde and P. B. Mane : “Review on high penetration of rooftop solar energy with secondary distribution networks using smart inverter”, Energy Reports, Vol.8, pp.5852-5860 (2022)

【電気学会論文誌B,143巻,1号,2023に掲載】

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