用語解説 第143回テーマ: 3D プリンテッド絶縁体
2023/02/06
栗本 宗明 (名古屋大学)
1. 3D プリンテッド絶縁体とは
高性能な固体絶縁物は,新材料の採用のみならず,その製造プロセスの改良によっても実現される。近年,付加製造技術(Additive manufacturing,以下AM 技術と表記)や3D プリンティング(3D プリント技術)が再度注目を集めており(1),従来技術では実現しにくい形状や材料構造を持つ固体絶縁体を実現する可能性がある。3D プリンティングは,AM 技術に含まれる用語であるが,その言葉が持つ印象や歯切れの良さなどから広く使われている。本解説では,3D プリンティングで成形した絶縁体(3D プリンテッド絶縁体)の成形例と技術的課題を紹介する(2)。
2. 3D プリンテッド絶縁体の成形例と技術的課題
3D プリンテッド絶縁体の成形例として,マイクロメートルサイズのアルミナ粒子を充填したコンポジットの円錐台形スペーサ(図1 (a))や(3),やわらかいゴム材料の中空絶縁物(図1 (b))などが報告されている。技術的課題は,造形時間と,積層界面が物性に及ぼす影響である。造形時間は長いもので日単位のものもあるが,装置開発が進み短くなってきている。3D プリンテッド絶縁体には積層界面(又は材料界面)が必ず存在し,この界面が電気的物性に及ぼす影響を明らかにする研究が鋭意進められている(4)。
3D プリンテッド絶縁体を電力機器,電気電子デバイスに適用する研究は端緒についたばかりであり,その材料研究が世界中で始まっている。材料,装置,CAD モデル,機器などの研究開発がさらに必要であるが,将来の製造プロセスや緊急時の部品調達などが様変わりするかもしれない。
図1 3D プリンテッド絶縁体の一例
文献
(1) Makers : The new industrial revolution, crown business (2012)
(2) M. Kurimoto, et al. : CIGRE2020 (2020)
(3) M. Kurimoto, et al. : IEEE Trans. Dielectr. & Electr. Insulation, Vol.23, No.5, pp.2985-2992 (2016)
(4) M. Kurimoto, et al. : Additive Manufacturing, Vol.46, pp.1-8 (2021)