用語解説 第144回テーマ: 二重給電交流機

2023/03/01

柴田 龍一 〔電源開発(株)〕

1. はじめに

二重給電交流機(Doubly Fed Machine)は,固定子(1次巻線)と回転子(2 次巻線)の2 箇所において電力系統に連系される回転機となる。構造は基本的に巻線型誘導機と同じとなり,回転子はスリップリングを介して電力系統に接続される。二重給電交流機の電力機器への代表的な適用例としては,風力発電機,可変速揚水発電機があげられ,それら機器の速度制御は,一般的に回転子(2 次巻線)を通じた2 次励磁制御方式が採用される。

2. 風力発電機に適用される二重給電交流機の構成・特徴

二重給電誘導発電機(DFIG:Doubly Fed Induction Generator)として,風力発電機に適用した場合の構成例を図1 に示す。構成要素は主に,風車,増速機,発電機側変換器,系統側変換器,DC リンクとなる。変換器の素子は,風力発電機に適用され始めた1980 年代初頭においては,サイリスタにて構成したサイクロコンバータが使用されていたが,近年ではIGBT が使用されており,どちらも速度制御は,2 次巻線と変換器にて双方向の融通を行う超同期セルビウス方式†が採用される。

† 2 次励磁制御方式の種類


図1 風力発電機(方式:DFIG)の構成図

主な特徴としては,以下があげられる。
・速度制御は超同期セルビウス方式であるため,同期速度の上下に速度制御が可能となる。風速に見合った回転数に制御することで,発電機の出力を高く保つことができる。
・発電機側変換器においてベクトル制御を採用すると,有効電力・無効電力の高速制御を実現する。
・回転子に加える励磁電圧を変換器にて制御することで,固定子側に誘導される励磁電圧を系統電圧と同期が可能であるため,起動時の突入電流が小さい。
・2 次巻線や変換器の過電流保護として,系統事故時は一時的に2 次巻線に抵抗を介して短絡させ,過電流の減衰を速めるクローバ回路を有する。

文献

(1) 「特殊同期機の現状と将来動向」,電気学会技術報告,No.1301 (2014)
(2) 平綿諒也・甲斐隆章:「風力用巻線形誘導発電システムのLVRT 性能の検討」,電学誌B,Vol.132, No.4 (2012)
(3) 電気工学ハンドブック(第7 版),オーム社 (2013)

【電気学会論文誌B,143巻,3号,2023に掲載】

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