用語解説 第147回テーマ: 状態基準保全
2023/06/19
新開 裕行 〔(一財)電力中央研究所〕
1. 設備の保全方式
機器・設備は,運転開始から経年や摩耗などによる劣化が始まるため,適切なメンテナンス(保全)が必要である。機器・設備の保全方式は,「事後保全」と「予防保全」に大別される(図1)。
図1 保全方式の分類(JIS Z 8155 による)
「事後保全」は,機器・設備が故障した後に,その原因を調査して修理を行うものである。故障が発生してから対応するため緊急性が求められる場合が多い。一方,「予防保全」は故障が発生する前にメンテナンスを行うもので,「事後保全」が故障の修理を行うのに対して,故障の発生を未然に防ぐことが目的となる。
2. 状態基準保全
「予防保全」には,定期的にメンテナンスを行う「時間基準保全(Time Based Maintenance:TBM)」と運転中の設備・機器の状態を把握し,その結果に基づいてメンテナンスを行う「状態基準保全(Condition Based Maintenance:CBM)」がある。TBM のメンテナンス周期は,機器・設備を構成する部品の中で最も寿命の短いものに支配されるため,一律の周期でメンテナンスを続けると一般には過剰メンテナンスの傾向となる。一方,CBM は,機器・設備の状態に基づく適切なタイミングでメンテナンスを行う事ができるが,そのためには機器・設備に発生するあらゆる劣化現象を理解する必要がある。これは技術的にも経済的にも容易ではない場合もあり,また,故障時の影響が軽微で修理が簡易・低コストに行える場合には「事後保全」が合理的な場合もある。このため,事後保全とTBM,CBM の各方式については,それぞれの特徴を考慮して適切に組み合わせることが重要である。
文献
(1) 河村達雄・田中祀捷:電気設備の診断技術改訂版,電気学会 (2003)