用語解説 第148回テーマ: HIL

2023/07/03

直井 伸也 〔東芝エネルギーシステムズ(株)〕

1. HIL とは

HIL はHardware-in-the-Loop の略称であり,実機の制御装置の動作検証を行う手法である。Hardware-in-the-Loop-System またはHardware-in-the-Loop-Simulator としてHILS と呼ぶこともある。図1 に示すように,実機の制御装置と,その制御対象の機器の動作等をリアルタイムで再現できるシミュレータとを組み合わせ,シミュレータから実機の制御装置へとその動作に必要な情報を入力し,制御装置から制御信号をシミュレータ内に再現した制御対象の機器に出力することで動作が正常か否かを検証する。このように,ループの中に実機(Hardware)を入れた構成であることがHardware-in-the-Loop の名称の由来である。


図1 HIL の構成例

HIL の利点には以下が挙げられる。

  • 制御対象の実機や検証対象の実システムを用意できなくても制御装置の妥当性を検証できる
  • 計算機シミュレーションでは考慮することが難しい制御装置の演算時間や通信の遅れの影響等を考慮できる
  • 制御対象の破損の恐れがなく検証を効率的に行える

2. 電力用の機器のHIL の適用例

保護継電器の検証を例として挙げる。電圧源,送電線,遮断器等をシミュレータで模擬し,送電線に電気が流れる現象をリアルタイムで再現させる。電力用のシミュレータにはアナログとデジタルがあり,前者は対象システムを等価的にスケールダウンした抵抗やリアクトル等を組み合わせて実際の電気回路現象を利用するもの,後者は電気回路現象を定式化して高速に演算した結果を利用するものである。シミュレータで再現した電力系統で地絡等を発生させるとリアルタイムに現象が再現され,その電圧や電流といった情報を実機の保護継電器が受け取り,それに従って保護継電器が異常の判定を行う。異常と判定した場合は保護継電器が異常検出信号を出力し,シミュレータ上に再現した遮断器を開放する。このように制御対象の機器等が無くても,実機の動作を検証できる。

【電気学会論文誌B,143巻,7号,2023に掲載】

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