用語解説 第150回テーマ: SF6代替新技術

2023/09/01

加藤 達朗〔日立製作所〕

1. SF6 代替とは

2050 年カーボンニュートラルの目標へ向け,欧州や北米を中心に電力用SF6 ガスの環境規制が具体化しつつある。SF6 ガスはガス絶縁機器のコンパクト化に対して非常に優れた絶縁ガスであるが,ガスの地球温暖化係数が極めて大きいことから電力用SF6ガスの使用量削減が叫ばれている。このSF6 に変わるSF6 代替ガスを適用した電力用機器の開発が要求されており,国内外において将来に向けたSF6 ガス削減に向けたロードマップが提案されている(1)(2)。特に欧州ではF ガスの法規制の議論が進んでおり,早ければ2024年1 月には施工される予定である。

2. SF6 代替技術

SF6 代替技術として,主に2 つの代替手法が提案されており,それらを紹介する。

(1) Fluoronitrile ガス

環境規制の要請に対して主絶縁ガスにC4-FN ガスを用い,CO2 ガス,O2 ガスなどと混合して使用する技術が提案されている。このC4-FN 混合ガスを用いたSF6 代替機器を考えた場合,SF6 ガスのGIS 技術の多くを転用できることや,超高圧クラスまで対応可能であるといわれている。現在では420kV クラスまでの開発完了が報告されており,遮断に関してもこの代替ガスによる遮断性能を確保している。

(2) Natural origin ガス

自然由来のガス(N2, O2, CO2)を使用した代替技術であり,主には真空遮断器(VCB)の遮断性能を期待した機器構成が提案される。この場合は,たとえ大気開放したとしても環境面への影響は心配なく,クリーンな環境対応を実現可能である。しかしながら,SF6 ガスの優れた絶縁性能を代替するためには機器の大型化を抑制することが課題である。
いずれの方式としても,機器に対する長期信頼性の性能評価や分解生成物に対する安全性評価,長期的には経済合理性が必要不可欠であり,今後の技術開発が期待される。

文献

(1) ENTOS-E : https://www.tdeurope.eu/publicationss/position-papers.html
(2) JEMA : https://www.jema-net.or.jp/Japanese/pis/sf6roadmap.html

【電気学会論文誌B,143巻,9号,2023に掲載】

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