用語解説 第152回テーマ: 非同期電源比率(SNSP)

2023/11/01

山崎 潤〔(株)日立製作所〕

1. 非同期電源比率の定義

非同期電源比率 (SNSP: System Non-SynchronousPenetration) とは,電力系統への非同期発電機導入比率を表す指標である。SNSP は以下の数式により定義される(1)。

ここで, NSGen は太陽光発電,風力発電,およびその他の非同期発電機に由来する総発電出力, Demand は対象電力系統における全発電出力から連系線流入・流出電力を差し引いた総需要, HVDC Import およびHVDC Export は隣接系統との直流連系による流入・流出電力,をそれぞれ表す。

2. 非同期電源比率の活用目的

再生可能エネルギー(再エネ)導入によるインバータ電源IBR の増加に伴い,従来の火力発電機を代表とする同期発電機から提供されていた系統慣性が減少し,系統擾乱に対する周波数変化率RoCoF の増大および周波数低下最下点fNadir の低下が生じる。この結果として,RoCoF リレー・周波数低下リレーUFR の動作による連鎖的な電源脱落から発電機の一斉解列・ブラックアウトが発生する恐れがある。
系統安定度維持のため,SNSP 閾値超過時の再エネ出力抑制,リレー検出基準の変更,仮想同期発電機VSG 機能を具備したインバータ導入が対策として検討されている。

3. 非同期電源比率に関連する各国の状況

上記課題が顕在化しやすい系統として系統容量が小さく他系統との同期連系が限定される島嶼国等が挙げられる。
アイルランドEirgrid は系統安定度を確保しつつSNSPを75%(2022) から95%(2030) へ段階的に増加させて再エネ導入量を増大させる目標値を設定している(2)。
日本では,電力広域的運営推進機関によりSNSP を含む系統慣性評価指標の導入が提言されるとともに,シミュレーション検証により2030 年および2050 年の連系線増強前の想定条件における系統慣性不足断面が確認された(3)。

文献

(1) Eirgrid : System Non-Synchronous Penetration Definition andFormulation (2018)
(2) Eirgrid, SONI : Shaping Our Electricity Future Roadmap Version1.1 (2023)
(3) 電力広域的運営推進機関:「再エネ主力電源化」に向けた技術的課題及びその対応策の検討状況について~ 感度係数の特性分析と将来断面の慣性力確保状況の試算~」,第73 回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会, 資料6 (2022)

【電気学会論文誌B,143巻,11号,2023に掲載】

用語解説のまとめページ