用語解説 第153回テーマ: 需給調整市場
2023/12/01
佐藤 智希〔富士電機(株)〕
1. はじめに
電力系統は需要家が使用する消費電力(需要)と発電事業者が供給する有効電力(供給)を常に一致させる必要がある。この需要と供給のバランスが崩れると周波数が変動し,最悪の場合には広範囲に及ぶ停電が発生する恐れがある。そのため,需要と供給が同じ時間に同じ量になる同時同量でなければならない。しかし,実際には需要予測,再生可能エネルギーの発電予測の誤差,電源の予期せぬ停止や30 分以内の需給変動などにより計画通りに需要と供給は一致しない。そこで,一般送配電事業者は需給バランスを調整するための電源(調整力)確保,および周波数調整・需給調整を行う重要な役割を担っている。公平性確保や調達コストの透明性・適切性確保の観点から各一般送配電事業者が調整力を管轄内(エリア)で公募調達してきたが,周波数調整や需給調整を行うための調整力をより効率的に調達・運用するために需給調整市場が2021 年4 月に開設された(1)。
2. 需給調整市場の概要
需給調整市場は,主に需給調整市場システムと広域需給調整システムによって調整力を調達し,運用されている。需給調整市場システムは,各エリアで計算された必要調整力量を全国大で広域調達し,連系線の空き容量などの制約を満たした上で約定処理する機能を有する。広域需給調整システムは,全国大で調達した調整力の中から,各エリアにおける発電・需要電力量の計画値と実績値の差分(インバランス)の調整と,調整力が発動した場合のコストを考慮し,調整量を各エリアに配分する機能を有する。
また,需給調整市場の取扱商品と導入スケジュールを表1に示す。一般送配電事業者が指令を発信してから供出可能量まで出力変化するのに要する時間(応動時間)や最大値または指令値を継続して出力し続けることが可能な時間(継続時間)によって商品が区分されている。2024 年度より,全ての商品が揃うことになる予定のため需給調整の更なる効率化が期待されている。
文献
(1) 送配電網協議会:「需給調整市場とは」(アクセス日:2023 年8 月31 日)https://www.tdgc.jp/jukyuchoseishijo/outline/outline.html