用語解説 第154回テーマ: ワイヤレス電力伝送

2024/01/02

横山 和弘 〔関西電力送配電(株)〕

1. はじめに

最近,電気自動車への走行中充電やドローンへのワイヤレス充電,電波伝送を利用した埋込み医療デバイスへの電力供給などで注目されている,ワイヤレス電力伝送について解説する。

2. ワイヤレス電力伝送の方式

ワイヤレス電力伝送( Wireless-Power-Transfer)は金属接点やコネクタなどの物理的接続を介さずに電力を伝送すること,およびその技術のことを指し,大きく「放射型」と「結合型(非放射型)」の 2つに分けられる。「放射型」は長距離の電力伝送に適しておりレーザー光線などの光を用いた方式やマイクロ波などの電波を用いた方式があり,宇宙で発電してマイクロ波やレーザー光で地上に電力を送る宇宙太陽光発電も研究されている。「結合型」は近距離の電力伝送を効率的に行える方式で,さらに 2電極間で電界を介してエネルギーを伝送する「電界結合方式」と, 2つのコイル間で磁界を介してエネルギーを伝送する「磁界結合方式」の 2つに分類される。

3. 磁界結合方式の特徴

「結合型」の 2つのうち「電界結合方式」は給電部の発熱が少ない等の特長はあるものの誘電率が変わる異物(水など)に弱いため,近距離での高効率伝送が可能かつ物質の影響を受けにくい「磁界結合方式」が広く採用されている。
(1)磁界結合(電磁誘導)方式
古くから変圧器などで使用されている電磁誘導の原理を電力伝送に使ったもの。金属接点(電極)の露出がなく安全なため,電動歯ブラシやスマホのワイヤレス充電など,すでに身の回りの様々な機器で実用化されている。
(2)磁界共鳴方式
「磁界結合(電磁誘導)方式」の中でも,送受電に用いるコイルを「共振(共鳴)状態」とすることで効率を上げ,コイル間の位置の自由度を高める工夫がなされている方式。従来の磁界結合(電磁誘導)方式よりも伝送距離が長く利便性に優れ,位置ズレにも強い。

4. 実用化への動き

電気自動車(EV)の走行中充電や非接触充電,有線では漏電の恐れがある水中でのポンプ等の水中機器,心臓ペースメーカーといった医療機器への適用など,エネルギー供給の新たな形として大きな可能性があるため,今後の技術進歩が大いに期待されている。

 

【電気学会論文誌B,144巻,1号,2024に掲載】

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