用語解説 第156回テーマ: エコロジカル・フットプリント

2024/03/01

重信 颯人 〔福井大学〕

1. エコロジカル・フットプリントとは

エコロジカル・フットプリント(EF)とは,ある一定の人口あるいは経済活動を維持するための資源消費量を生み出す自然界の生産力,および廃棄物処理に必要とされる自然界の処理吸収能力を算定し,生産可能な土地面積に置き換えて表現する指標である。 EFの単位には,「平均的な生物生産力をもつ土地 1ヘクタール」に相当する「グローバルヘクタール (gha)」という独自の単位が用いられる。この EFは「自然の生産力は,人口増に伴って増大する人類の物的需要に見合うだけの量を充分に供給することができるだろうか」などの研究課題を探求することができる。この EFの基礎概念は,William Reesと Mathis Wackernagelらによって提唱された。

2. エコロジカル・フットプリントの計算

ある消費パターンを継続するために必要な土地の総面積を得るには,重要な消費カテゴリーがどれだけの土地利用に相当するか算出する。実際の計算では,主要なカテゴリーとそのカテゴリー内の主要な個々の財を選択し,絞って算出を行う。主要なカテゴリーは,政府統計に使用されているデータ分類を採用し,5つのカテゴリー(食料,住居,交通,消費財,サービス)に分けることが実用的である。地域別データあるいは全国データの総消費量を人口で割って,平均的な個人の年間消費量を算出する。また,政府統計からは生産だけでなく貿易に関する数値も得られ, (1)式のように貿易を考慮した補正純消費量を算出する。

貿易量を補正した純消費量=生産量+輸入量-輸出量 ……(1)

次に,各消費財 iの生産に必要となる 1人当たりの土地面積 aai [ha]を,(2)式より算出する。これは,消費財の 1人当たりの平均年間消費量 ci [kg/capita]を,その消費財の平均年間土地生産性 pi [kg/ha]で割って得る。

aai = ci / pi ……………………………………………………(2)

平均的な 1人当たりの EF値 [gha/人]は,消費財においてそれぞれ収奪している生態系面積 aai [ha]の総計を算出することで得る。この EF値に調査対象集団の人口を掛けることで調査対象集団の EF値が算出される。
総合地球環境学研究所・FEASTプロジェクトによると,日本人 1人当たりの平均 EF値は 4.7 [gha]であり,国内では東京都の 5.24 [gha]が最大で,最小は山梨県の 4.06 [gha]である。世界中の人間が日本平均の生活をすると,地球 2.8個分必要であることが示されている。 1961年~2018年の間に,日本人の人口は 34%増に対して, EF値は約 55%増加した。

文献

(1) W. Mathis,他:エコロジカル・フットプリント地球環境維持のための実践プランニング・ツール,合同出版 (2004)
(2) T. Kazuaki, et al. : “Decentralization & local food: Japan’s regional Ecological Footprints indicate localized sustainability strategies”, Cleaner Production, Vol.292, No.10 (2021)

 

【電気学会論文誌B,144巻,3号,2024に掲載】

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