用語解説 第157回テーマ: 洋上風力発電の電気システム

2024/04/02

岡山 仁 〔東芝エネルギーシステムズ(株)〕

1. 洋上風力発電の状況

日本の洋上風力発電の導入量は 2022年時点で 480万 kW(1)と再エネ先進国(特に欧州)に比べて導入が遅れているが, 2050年のカーボンニュートラル実現に向け, 2030年までに 1,000万 kW,2040年までに 3,500~4,500万 kWの洋上案件形成を目標としている(2)。

2. 洋上風力発電の電気システム

洋上風力発電の電気システムは,変電所/変換所,ケーブルで構成され,発電量,離岸距離,水深に応じて,構成が異なる。風車の総発電量が小さければ風車と陸上変電所を交流ケーブルで直結し,電力系統と連系することができる。ただし,大容量かつ,多数の風車を陸上変電所に接続する場合は,ケーブル本数が増え,それに伴い初期コストが増大する。このため,洋上に変電所を設置し,集電,昇圧することで,ケーブル本数を削減し,電気システムの最適化を図る。洋上変電所には着床式と浮体式があり,水深 50メートル以内であれば着床式, 50メートルを超える場合は浮体式が良いとされている(3)。送電方式は交流送電と直流送電があり,コスト比較によると送電距離 50km以内は交流,50km以上は直流が有利とされている (4)。洋上で直流送電が必要となる場合は,洋上のプラットフォーム上に交直変換器を設置する必要がある(洋上変換所という)。

3. 電気システムの課題と状況

洋上風力の導入が進んでいる欧州は遠浅の海域が多く着床式の洋上風力の導入が進んでいる。遠浅の海域が少ない日本では,将来的には浮体式洋上風力発電所の需要が高くなると考えられている。しかしながら,浮体式洋上変電所の実施例は世界中でも福島浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業(5)しかなく(自社調べ),導入に際しては電気システムの低コスト化が課題となっている。2050年のカーボンニュートラル実現に向け, NEDOでは 2021年からグリーンイノベーション基金事業 (6)を実施しており,浮体式洋上風力発電の電気システム低コスト化を後押ししている。

文献

(1) 日本風力発電協会: https://jwpa.jp/information/6788/
(2) 資源エネルギー庁:「洋上風力産業ビジョン(第 1次)」,洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会 (2020)
(3) NEDO:着床式洋上風力発電導入ガイドブック(最終版) (2018)
(4) CIGRE: Voltage Source Converter (VSC) HVDC for Power Transmission-Economic Aspects and Comparison with other AC and DC Technologies (2012)
(5) 福島洋上風力コンソーシアム: http://www.fukushima-forward.jp/ gaiyou/index.html
(6) NEDOグリーンイノベーション基金事業: https://green-innovation. nedo.go.jp/

 

【電気学会論文誌B,144巻,4号,2024に掲載】

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