用語解説 第158回テーマ: 電圧フリッカ
2024/05/02
長谷川 匡彦 〔東京電力ホールディングス(株)〕
1. 電圧フリッカとは
電圧フリッカとは,電圧が周期的に変化することで,家庭などの照明が明るくなったり暗くなったりするチラツキが短い時間に繰り返される現象である。従来はアーク炉や溶接機といった大容量機器が主原因となっていたが,近年では太陽光発電用パワーコンディショナ( PV-PCS)に起因するものも現れている。
2. 電圧フリッカ発生の背景
近年,再生可能エネルギーの大量導入が進んでおり,特に太陽光発電( PV)の電力系統への接続が増加している。高低圧配電系統では発電設備を系統に接続する際に電力保安および供給信頼度維持のための保護機能として単独運転検出機能が必要となる。本機能は,停電事故発生時などに商用系統から当該発電設備が切り離された際に,自端情報に基づいて直ちに解列する機能である。主に低圧の PV-PCSでは単独運転検出機能として新型能動的方式が普及している。この方式は一定の周波数の無効電力を系統に注入することから,PV連系量が多い地域では系統リアクタンスと掛け合わされることで電圧の揺れ(電圧フリッカ)を発生させることがある。
3. 電圧フリッカの対策
電圧フリッカの対策としては PV-PCSが注入する無効電力量を減少させるゲイン低減( PV-PCS設定変更)が挙げられる。図 1に PVが連系する配電系統の潮流と PV-PCS設定変更箇所を示す。ゲイン低減は PCSが単独運転検出機能を損なわない範囲で実施され,その有効性が確認されている。また,その他の対策として STATCOM(自励式無効電力補償装置)や SVC(静止型無効電力補償装置)を高圧配電系統に設置する場合もある。
文献
(1) 東京電力パワーグリッド(株):「電圧フリッカについて」,https:// www.tepco.co.jp/pg/electricity-supply/operation/distribution/flicker. html