用語解説 第159回テーマ: 系統混雑

2024/06/13

金子 曜久 〔早稲田大学〕

1. はじめに

太陽光発電や風力発電をはじめとする再生可能エネルギー電源(以下,再エネ電源)が大量導入された電力システムにおいて,安定的に高品質な電力を供給するためには,系統運用における技術面および設備計画面の双方において解決すべき課題が存在する。その一つとして挙げられるのが,「系統混雑」である(1)。系統混雑とは,変電所や送配電線などの系統設備に流れる潮流がその設備容量を超過してしまうことを意味する。本用語解説では,近年,多くの検討がなされている再エネ電源の発電出力に起因した系統混雑を中心に,その概要と対策について概説する。

2. 系統混雑とその対策(1)(2)

系統混雑において,主に対象となる系統設備とその対策は,電力システムの電圧階級ごとに異なる(図1)。基幹系統では送電線の容量超過が,ローカル系統や配電系統では,それに加えて変電設備の容量超過も懸念されている。これらへの対策としては,設備増強や再エネ電源の出力抑制による潮流の緩和などが挙げられるが,設備増強は確実な対策である反面,設備コストの増大やリードタイムが長いといった課題があり,再エネ電源の出力抑制は,迅速な対応が可能な反面,発電機会の損失につながるという面がある。従って,一つの対策に限らず複数を組み合わせた運用が望まれている。また,これらの対策に加え,ローカル系統や配電系統において,近年注目されているのが,蓄電池や電気自動車,ヒートポンプ給湯器などの分散型電源による需要創出(DERフレキシビリティ)である。2022年度より開始されたNEDOの「電力系統の混雑緩和のための分散型エネルギーリソース制御技術開発」では,その土台となるプラットフォームの開発やフィールド実証による評価検討が進められており,DER活用による混雑緩和の機運が高まっている(2)。

 

文献

(1)資源エネルギー庁:「電力ネットワークの次世代化」,総合エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第45回),資料1 (2022)
(2)石井英雄:「NEDO電力系統の混雑緩和のための分散型エネルギーリソース制御技術開発(FLEX DER)事業の概要」,第4回次世代の分散型電力システムに関する検討会,資料4 (2023)

【電気学会論文誌B,144巻,6号,2024に掲載】

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