用語解説 第161回テーマ:オフグリッド
2024/08/01
下町 健太朗 〔函館工業高等専門学校〕
1. オフグリッドとは
オフグリッド(off-grid, あるいはoffgrid)とは,ある建物やコミュニティが既存の,公共のインフラストラクチャーに依存せずに,電力,ガス,水道などのライフラインのうち少なくとも1 つを自分たちで確保できている状態を指す。とりわけ電力の場合は,小規模な電力系統が,既存の大規模な電力系統から切り離された状態を指す。これはどのような経緯でそうなったかによらないので,電力の自給自足を目指すなど,何らかの意図を持ってあえてそう設計した電力網を指してオフグリッドと言えるし,島しょ部の電力系統のように物理的な理由から,あるいは途上国などで既存の系統へのアクセスが難しいという理由からそうならざるを得なかった場合もオフグリッドと言える(1)。また,小規模系統が常にオフグリッドである必要はなく,有事の際にのみ大規模系統から切り離してオフグリッド化するような運用もあり得る。
2. オフグリッド化のメリット
あえてオフグリッド化することが需要家にもたらすメリットとしては,大規模系統の停電の影響や,電気料金の低減が挙げられる。近年は自然災害により,電力系統において大規模停電が起こる機会が増してきている。太陽光発電装置は住宅などにおいても普及してきているが,多くは大規模系統側が停電している時に動作を停止するように設計されているため,緊急時の電源にはなり得ない。一方で,オフグリッド化している系統は大規模系統の影響を受けないように設計されているため,自前の電源さえ動作していれば電力の自給自足が可能であることが多い。電気料金の削減についても,電力の自給自足によって達成される。以前はオフグリッド化するための電源等の各種設備の導入費用が高額であったために,電気料金を支払わない運用だけで採算を取ることが難しかったが,近年は価格低下により達成可能となる場合がある。
3. オフグリッド化の課題
外部に協力を求めることができないため,系統内で起こるすべての事象に対して自前の設備で対応する必要がある。太陽光発電と蓄電池を組み合わせた電源構成は比較的容易に想像できるが,これらは電圧や周波数の瞬間的な変動に対して,既存の大規模系統よりも弱い。加えて,中長期的に天候が晴れや曇り・雨のどちらかに偏るような場合も,エネルギーの面からバランスを保つことが難しい。
文献
(1)IEA : “Guidebook for Improved Electricity Access Statistics”, https://www.iea.org/reports/guidebook-for-improved-electricityaccess-statistics(アクセス日:2024年4月3日)