用語解説 第165回テーマ:ホスティングキャパシティ

2024/12/04

花井 悠二〔(一財)電力中央研究所〕

1. ホスティングキャパシティとは

ホスティングキャパシティ(HC: Hosting Capacity)は,電力系統における分散型資源(DER: Distributed Energy Resource)の導入可能量を示す指標であり,2004年に欧州連合プロジェクトEU-DEEP(1)で提案され,2010年頃から配電系統の計画・運用に関するホットトピックとなっている(2)(3)。当初は主に太陽光発電の配電系統への導入検討に利用されていたが,近年では電気自動車充電器などの需要側リソースの導入可能量を示す指標としても注目されている。

2. 算出方法

DER の導入可否は種々の技術的な制約要因を考慮して判断する必要があり,対象系統の電気的特性および制御特性を考慮した解析の結果を基に,各制約要因に対して得られるDERの導入可能量の最小値がHCとして算出される。制約要因には主に以下の項目が考慮され,この他にも保護装置の定格や配電線の電力損失などを制約要因として扱う事例もあり,様々な手法が研究されている。

  • 電圧レベル:Under and over voltages
  • 設備電流容量:Equipment ampacity
  • 電圧不平衡:Voltage unbalance
  • 電圧フリッカ:Voltage flicker
  • 高調波:Harmonics
  • 事故電流:Fault current

なお,制約要因の影響は地点や時間帯により異なるため,一般にHC は評価断面毎に算出されることとなる。

3. 課題と展望

HCは,再生可能エネルギーの電力系統への統合を促し,持続可能で信頼性の高い電力供給を実現するための重要な指標となり得るものである。ただし,HCは系統解析の精度に影響されるため,発電機・負荷の特性や分布,系統の構成・制御・保護などに関する様々なパラメータおよび制約条件を適切に想定しなければならない。また,それらの不確実性の影響が無視できない場合,様々なシナリオを評価する必要がある。現状,HCの算出方法は文献によって異なり,活用方法も明確に定まっているとは言い難いが,配電部門を中心に様々な研究と活発な議論が行われており,今後の動向を注視する必要がある。

文献

(1) J. Deuse, et al. : “EU-DEEP Integrated Project – Technical Implications of the “Hosting Capacity” of the System for DER, Engineering”, Environmental Science (2008)
(2) N. Qamar, et al. : “Hosting capacity in distribution grids: A review of definitions, performance indices, determination methodologies, and enhancement techniques”, Energy Sci. Eng., Vol.11, pp.1536-1559 (2023)
(3) S. Mina Mirbagheri, et al. : “Hosting capacity analysis: A review and a new evaluation method in case of parameters uncertainty and multi-generator”, IEEE EEEIC/I&CPS Europe (2018)

【電気学会論文誌B,144巻,12号,2024に掲載】

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