用語解説 第168回テーマ:ポリマーがい管

2025/03/10

山本 直人〔中部電力パワーグリッド(株)〕

1. ポリマーがい管とは

電力用機器のがい管・がいしは磁器製のものが広く使われてきたが,近年シリコーンゴムを使ったポリマーがい管・がいしの適用が国内外で拡大してきている。ポリマーがい管は,一般にFRP筒と外被ゴムと把持金具の3要素から構成されており,特に絶縁被膜として外被材に高分子材料を使用しているのが大きな特徴である(図1)。シリコーンゴムの特徴として,主鎖の結合に起因した高い耐候性を有していることや,充填剤などを添加することにより優れた耐トラッキング特性,耐エロージョン特性を得ること等が挙げられる。


図1 ポリマーがい管の構造例

2. ポリマーがい管の特徴

ポリマーがい管は次の長所を有している。
(1) 耐汚損特性:外被ゴムの撥水性により連続的な水膜を形成しにくいため,漏れ電流が流れにくく,耐汚損特
性に優れる。また,汚損物が付着しても,低分子シリコーンが汚損物の外表面までしみ出すため,徐々に撥水性が回復する特徴がある。
(2) 耐震性:FRP 筒をコア材として使用していることから曲げ強度が高く,かつ磁器がい管と比べて軽量である
ため,耐震性に優れている。
(3) 飛散防止:内部事故等で故障した場合の破片の飛散防止の観点等から適用が拡大している。
(4) 作業性向上・省力化:磁器がい管と比べ軽量であるため,組立・据付作業性の向上が期待できる。一方で,シリコーンゴムは引裂き強度が弱いことから,外被に直接負担がかかる作業は避ける等の配慮が必要となる。

文献

(1) 「ポリマーがい管の設計基準・試験法の標準化」,電気協同研究,Vol.72, No.4

【電気学会論文誌B,145巻,3号,2025に掲載】

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