用語解説 第170回テーマ:タンデム型太陽電池
2025/05/07

指宿 洋介〔東京電力HD(株)〕
1. タンデム型太陽電池とは
タンデム型太陽電池は,異なる種類の光電変換層を重ねた構造を持つ太陽電池である。光電変換層は特定の波長帯を吸収するが,タンデム型では積層された複数の変換層がそれぞれ異なる波長帯を吸収するため,全体としてより高い変換効率を実現できる。
2. タンデム型太陽電池の構造と最近の開発例
タンデム型太陽電池では,光が入射する上部に配置されるトップセル,下部に配置されるボトムセルで構成され,それぞれ短波長光,長波長光を吸収する。
最近の開発例として,ペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池を積層した4端子タンデムセルで30%を超える変換効率を達成した報告(1),亜酸化銅(Cu2O)を用いたシリコンとのタンデム型太陽電池の開発(2)などがある。そのほか,太陽光の波長を幅広く活用するために3層や4層,さらに6層まで直列に多接合したⅢ-Ⅴ族化合物半導体太陽電池なども研究されている。。
3. タンデム型太陽電池の利点
タンデム型太陽電池の主な利点は,変換効率の向上にある。単層の太陽電池は,一定の波長の光しか利用できないが,異なる材料を組み合わせることで,より広範囲の光を吸収し,効率的にエネルギーを変換できる。変換効率が向上することにより,面積当たりの発電量が増加し,設置面積に制約がある場面において有利となる。
4. タンデム型太陽電池の課題
タンデム型太陽電池の開発・普及には,いくつかの技術的課題が存在する。異なる素材を組み合わせ,精密に積層する技術が必要であり,製造コストが高くなる可能性がある。また長期的な安定性や耐久性の確保も重要な課題である。材料技術や製造プロセスの進展によりこれらの課題が解決し,高効率でコスト効率の良いタンデム型太陽電池が生産できるようになれば,再生可能エネルギーの拡大を支える重要技術の一つとなる可能性が高まる。
文献
(1) “Organic Photovoltaics & Optoelectronics (IPEROP25)”, Proc. of Asia-Pacific Conference on Perovskite (2025) https://www.nanoge.org/proceedings/IPEROP25/674485ceb28cbb284d737184
(2) 「発電効率10%を超えるCu2OセルをSiセルに積層した高効率タンデム太陽電池」,東芝レビュー,Vol.79, No.2 (2024-3)