用語解説 第173回テーマ:DERMS

2025/08/01

泉 翔太〔三菱電機(株)〕

1. はじめに

第6 次エネルギー基本計画(1)によると,2030 年度の総発電電力量のうち再生可能エネルギーの割合は36~38%と予測されている。したがって,既存の電力系統の混雑緩和に分散型エネルギーリソース(DER, Distributed Energy Resources)を効率的に活用することが必要となる。しかし,グリッド運用者が,大量のDER を個別に管理することは極めて困難である。そのため,それらを管理するシステムであるDERMS(Distributed Energy Resource Management System)が注目されている。

2. DERMS とは

DERMS とは,送配電事業者が送配電系統の系統混雑を管理することを目的に,系統の監視とDER の直接的,もしくはアグリゲーターを介した監視制御を統合・管理するシステムの総称である(2)。DERMS は4 つの主要な特性を持っており,効率的なDER 管理を実現可能とする。1 つ目の特徴はAggregation(集約)である。DER をまとめて扱うことで,グリッド運用者の管理負荷を軽減する。2 つ目はSimplification(簡素化)である。グリッド運用者がDER から引き出したいサービス(機能)を要求することで,各DER の詳細設定・制御を実施可能とする。3 つ目はOptimization(最適化)である。最小コストで最大の結果をDER から取得でき,DER個々の特性(気象条件,バッテリ状態)を考慮し,最適化を実施する。4 つ目はTranslation(変換,翻訳)である。DER の様々なインタフェースを,一貫したインタフェースに変換することができる。上記のような特性を持つDERMS を活用することで,太陽光パネル等の再エネ電源普及に伴う系統混雑を緩和し安定した電力供給の実現が期待される。

3. DERMS 導入における課題

DER フレキシビリティ活用を実現するためには,一般送配電事業者システムとアグリゲーターシステムを繋ぐプラットフォームや,各システムとデータ連携が必要であり,それらを実現する業務プロセスの実現方法も検討されている。課題解決に必要な要素技術の探索と合わせて,将来拡張性も念頭に,システム要求の整理が実施されている(3)。

文献

(1) 経済産業省:「第6 次エネルギー基本計画」(2021 年10 月22 日)
(2) 三菱電機 Biz Timeline:「エネルギー問題解決のために知っておきたい7 つのキーワード」(2023 年2 月15 日)
(3) 経済産業省:「第4 回 次世代の分散型電力システムに関する検討会」(2023 年1 月18 日)

【電気学会論文誌B,145巻,8号,2025に掲載】

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