用語解説 第178回テーマ:直流グリッド
2026/01/01
吉原 徹 〔(株)日立製作所〕
1. 直流グリッドとは
従来,系統への直流活用は,長距離や海底を送電するための高圧直流送電が大半であった。近年,再生可能エネルギー電源(再エネ)や電気自動車をはじめ,電力変換器を介した接続機器の普及にともない,数100V から数kV の直流で電力網を構成する直流グリッド活用の検討が進んでいる(1)。工場やビルなど,電力変換器を多く用いるシステムでは,交流グリッドに比べ,交直変換による損失の低減や配線数の削減が期待できる。また交流系統と非同期で電力供給でき,太陽光発電や蓄電池を備えておくことで,交流系統の停電時にも自立したマイクログリッド運用が可能である。
2. 国内外の動向
電力変換器に関する技術開発は四半世紀以上にわたり進められているが,電力変換器を主軸とした直流グリッドは,交流グリッドに比べ歴史が浅く,現在,制度整備の議論が急速に進んでいる。IEC では,2017 年に“IEC SyC LVDC”を設立し(2),直流グリッドに関するシステムレベルでの規格策定を進めている。また,欧米の企業や大学を中心に,2021年に“Current/OS Foundation”が設立され(3),オープンな直流マイクログリッド標準の策定をめざし,安全性や相互運用性の開発が進められている。他方,日本でも直流利活用を進めるべく,日本電機工業会(JEMA)にて,低圧直流活用分科会を立ち上げ,直流対応製品を使用する相互運用における技術課題の解決に取り組んでいる(4)。再エネや蓄電池に加え,今後の導入増加が見込まれるデータセンタや水素電池なども,電力変換器を介して電力供給するため,直流グリッドとの親和性は高い。カーボンニュートラルの実現には,電力の安定供給と脱炭素化の両立が重要である。交流グリッドと直流グリッドの利点を組み合わせた電力網の構築が重要である。
文献
(1) 直流利活用に関する調査委員会:「直流利活用に関する調査報告(概括)」,電気設備学誌,Vol.41, No.2, pp.75-82 (2021)
(2) IEC SyC LVDC website : https://iectest.iec.ch/ords/f?p=103:186:104294062531192::::FSP_ORG_ID,FSP_LANG_ID:20447,25 (2025/9/25 取得)
(3) Current OS website : https://currentos.org/ (2025/9/25 取得)
(4) 日本電気工業会:「低圧直流活用分科会 普及啓発資料」,https://www.jema-net.or.jp/engineering/misc/s9lkug0000004t63-att/lvdc-01.pd