平成29年 電力・エネルギー部門「研究・技術功労賞」受賞者

 電力・エネルギー部門(B部門)では,長年,地道な活動を続けてこられ,技術の発展に貢献された研究者または技術者の方々の労に報いるとともに,電力・エネルギー分野技術の更なる発展を図ることを目的とし,平成18年から,部門表彰制度として「研究・技術功労賞」を新たに設けております。
 研究調査運営委員会および部門役員会での審査の結果,平成29年度の受賞者は,次の3名の方に決定いたしました。表彰は,明治大学で開催されました平成29年電力・エネルギー部門大会の表彰式(9月6日)で執り行われました。

件名 受賞者(所属) 受賞理由
「高調波現象の解析技術の発展及び高調波問題の解決への貢献」

雪平 謙二 殿
〔電力中央研究所〕

雪平 謙二 殿 〔電力中央研究所〕
 40年にわたり電力系統における高調波現象の解析技術の発展と高調波問題の解決に貢献した。解析技術では,電力系統における高調波の形成メカニズムを解明する各種解析手法の開発・改良に精力的に取り組まれた。また,受電電圧や負荷の相数などで分類した負荷グループ毎の高調波電圧への影響を定量的に明らかにし,原因が不明であった現象も含めて高調波電圧の形成メカニズムを解明した。これらの成果については,関連する基準・規格に反映されるとともに,電気学会B部門論文誌等,数多くの論文発表をされ,学術面での功績も大きい。規格等の策定に関しては,1990年代から20年にわたり高調波を担当する
IEC/SC77A国内委員会の幹事,委員長及び国際委員の重責を務め,JIS C 61000-3-2(家電品の高調波電流限度値)の制定・改正などに大きく貢献した。通商産業省(当時)の高調波抑制対策ガイドライン案及び高調波抑制対策技術指針(JEAG9702)の策定にも中心的役割を果たした。
「電力系統の直流連系技術に関する研究開発への貢献」

小西 博雄 殿
〔産業技術総合研究所〕

小西 博雄 殿 〔産業技術総合研究所〕
 長年にわたり直流連系技術の研究開発に携わり,送電系統の直流連系から再生可能エネルギーの交直変換による系統連系まで幅広く直流連系技術の発展に貢献された。
 送電系統の直流連系では,他励式の直流多端子送電における制御保護方式の開発や,自励式の直流送電における制御保護方式の開発など,実用に向けた制御保護方式の研究開発を行い,直流連系技術の向上に寄与した。また,制御保護方式の開発にあたっては,シミュレータを用いた直流連系系統の系統解析を行い,直流連系を含む系統解析技術の発展にも貢献した。
 再生可能エネルギーの交直変換による系統連系では,送電系統の直流連系で培った技術を生かし太陽光発電連系時の電圧変動抑制・高調波抑制などの系統安定化技術の開発や大容量パワーコンディショナーの開発に携わり,太陽光発電の大量導入のための技術開発に貢献した。
「電力系統の監視・制御システム技術発展への貢献」

鈴木 守 殿
〔エネルギー総合工学研究所〕

鈴木 守 殿 〔エネルギー総合工学研究所〕
 おおよそ40年にわたって電力系統の監視・制御技術,系統解析技術,保護リレーシステム技術の開発,研究に従事しており,日本の電力技術の発展におおいに貢献してきた。特に,系統監視システム,需給制御システムの発展,向上に寄与してきた。系統監視システムでは,電圧安定性の確保のためのオンライン監視システムを開発し,安定的な系統運用を実現した。開発したシステムでは,オンラインデータを基にPV曲線を作成し,電圧安定限界から電圧余裕を把握するものである。また,その日の最大需要時の電圧安定限界を算出する機能を持ち,事前に電圧安定化対策を実施可能とすることにより,電圧安定性を向上させた。需給制御システムでは,東京電力の中央給電指令所で運用されている需給自動制御システム(ELDAC)の開発に携わり,需給制御技術の発展に貢献した。同システムは,最適負荷配分(ELD)と負荷周波数制御(LFC)を備えており,電力系統の安定供給を向上させた。