令和7年 電力・エネルギー部門「研究・技術功労賞」および「部門活動特別貢献賞」受賞者
2026/05/20
電力・エネルギー部門(B部門)では,長年,地道な活動を続けてこられ,技術の発展に貢献された研究者または技術者の方々の労に報いるとともに,電力・エネルギー分野技術の更なる発展を図ることを目的とし,平成18年から,部門表彰制度として「研究・技術功労賞」を設けております。また,部門の活動に関する特に著しい貢献に対して,令和3年から「部門活動特別貢献賞」を新たに設けました。部門役員会での審査の結果,令和7年の「研究・技術功労賞」および「部門活動特別貢献賞」の受賞者は,以下の通り決定いたしました。受賞者は,令和7年電力・エネルギー部門大会の特別企画(9月18日)にて紹介されました。
■研究・技術功労賞(五十音順)
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小林 真一 殿[中部電力株式会社]
「特別高圧地中送電線の保全技術発展への貢献」 |
【受賞理由】
都市部での系統構成上中心的な位置を占め,重要な責務を負っている特別高圧地中送電線について,長年にわたりそれらの保全に係る研究開発に従事してきた。近年の電力設備の高経年化に伴い,電カシステム信頼度の維持を図るためには特別高圧地中送電線の故障の未然防止および早期復旧が重要な課題である。小林氏が主に取り組んできた以下の2件について列記する。なお,小林氏はこれらについて学位論文として取りまとめ,豊橋技術科学大学より博士(工学)の学位を得ている。
(1)GILなどのエポキシ樹脂絶縁物およびCVケーブルの繡耐電圧試験の精度向上
電力機器故障の大半を占める初期故障ならびに摩耗故障のうち,初期故障については工場での電力機器の製造品質の管理や検査技術は年々向上しているものの,例えばCVケーブル接続部やGILなどの絶縁部に多用されているエポキシ樹脂絶縁物の工場での耐電圧試験については精度向上の余地がある。また,地中送電線は接続部の組み立てを現地で行うため,組み立て時に発生する欠陥について耐電圧試験にて検出する必要があることから,日本国内の地中送電線の主流であるCVケーブルでは,耐電圧試験の精度向上が望まれている。
そこで,小林氏は工場におけるエポキシ樹脂絶縁物耐電圧試験の精度向上について,エポキシ絶縁物中の密閉ボイド内圧力の経時変化に着目し,低真空領域でのボイド放電の圧力依存性について様相を明らかにし,新名火東海線GILに適用されたエポキシスペーサの品質向上に寄与した。
また,現地施工後のCVケーブル耐電圧試験の精度向上については,接続部の現地組み立て時に発生し得る代表的な欠陥を選定し,減衰振動波電圧と超低周波電圧による組み合わせ耐電圧試験について評価を行い,欠陥検出能力に優れる試験装置のコンパクト化が可能であることを明らかにした。
(2)CVケーブル線路故障点標定技術の精度向上
電力機器故障箇所復旧のため,故障点の早期標定は電カシステムの信頼度維持の観点から重要であり,特に,ケーブル線路の場合は線路大半が地下に埋設されていることから,目視確認が可能な範囲が限られるため,故障点標定精度向上のニーズが高い。そこで,小林氏はCVケーブル故障点標定技術の高精度化についても取り組んだ。
適用事例の多いホイートストンブリッジを用いたマーレーループ法の高精度化では,精度低下の要因となる他回線からの誘電電圧などの外乱の影響を低減させるフィルタやノイズ除去方法の開発を行った。さらに,手動測定ならびにスキルレスを考慮した自動測定が可能な2種類の試作器にて実線路等にて評価を行い,それらが厳しい条件下である商用周波電圧200V重畳下において十分な精度が得られることを実証した。これらの成果については製品化され当社もその製品を現場に配備している。
これらに加え,小林氏はケーブル関係の電気学会調査専門委員会や標準特別委員会に委員として参加したとともに,論文委員会委員(B2グループ)にて論文誌の査読や,電気協同研究会「地中送電設備の施工技術に関する現状と今後の展望専門委員会(2023年4月〜2026年3月)」の委員長も務めている。
これら成果や活動より特別高圧地中送電線の保全技術発展への貢献が認められることから,研究•技術功労賞に推薦するものである。
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高原 景滋 殿[FTR株式会社]
「再生可能エネルギー技術開発及び系統安定化技術発展への貢献」 |
【受賞理由】
平成元年の入社以来(当時は沖縄電力株式会社),主に研究開発に従事し,平成4年から太陽光発電システムの実証研究において,宮古島の既存配電系統から2集落を分離・独立させ,蓄電池を有する太陽光発電を主電源,ディーゼル発電を補助電源とするハイブリッドシステムから定常的に電力を供給するという,現在の地域マイクログリッド技術の基礎にあたる研究を開始した。
沖縄において,屋根設置型太陽光発電システムの研究,太陽光発電フィールドテスト事業,集合型風力発電システムの制御技術開発,離島用ディーゼルハイブリッドシステム研究,レーザー風向風速計による風力発電制御研究,ITによる風力発電の総合監視制御システム開発に取り組んだ。
平成15年9月に宮古島を直撃した台風14号により風車3基が倒壊した際は,風洞実験・気流解析を含めて風車損壊原因を調査のうえ事故調査報告書を公表し,社内外に広く知見を共有した。国内初となる風力発電の耐風設計に関する指針策定では,事故で得た知見を提供し,国内の風力発電推進に大きく寄与した。
国外において,平成12年からタイ王国での太陽光発電ハイブリッドシステム実証研究,平成19年からラオス国での小水力発電・太陽光発電・蓄電装置(キャパシタ)設備を構築してシステム実証研究を行い,無電化地威に電気を届けることができ住民に非常謝された。
これまでの風力発電,系統安定化,電力貯蔵,太陽光発電の研究開発の実績を基に,平成21年から離島マイクログリッド実証研究,宮古島メガソーラー実証研究を実施。令和4年1月に来間島マイクログリッド実証研究設備を構築し,同年5月に国内で初めて,大元の送配電ネットワークから実際に対象エリアを切り離し,一般の需要家側に設置した太陽光発電と家庭用蓄電池,並びに対象エリア全体の需給調整を行う蓄電池との組み合わせのみで,既存の配電線を使用した電力供給に成功した。
令和3年8月「第7回 琉大未来共創フォーラム:脱炭素社会シンポジウム〜持続可能な沖縄のエネルギーを考える〜」において「沖縄電力の技術開発と脱炭素社会の実現に向けた取組み」を講演するなど,社内外へ研究成果を伝え技術継承へ貢献してきた。
長年にわたる再生可能エネルギー技術開発および系統安定化技術発展への多大な貢献を踏まえると,電気学会B部門「研究•技術功労賞」受賞にふさわしい人物である。
■部門活動特別貢献賞
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岩田 幹正 殿[一般財団法人電力中央研究所/名古屋大学]
「将来を見据えたB部門の各種活動の有機的かつ魅力的な展開施策への貢献」 |
【受賞理由】
B部門では各種活動の魅力的展開と発信,異分野異業種連携による会員数増・活動活性化が必要。
岩田氏は論文委員会の幹事・主査(’13-’19),編修委員会副委員長(’19~’21)・委員長(’22-’23),部門大会論文委員長(’20~’21),研究調査運営委員会副委員長(’21-’22)・委員長(’23-‘24),国際委員会委員長(’23~’24)など部門要職を務めた。
編修委員会および研究調査運営委員会の副委員長時にはB部門ビジョン2030およびビジョン2030ビヨンド策定に携わり,10技術委員会のロードマップ作成や毎年のローリングを主導した。研究調査運営委員会初の移動委員会・見学会を企画し,令和6年部門大会特別企画のパネルディスカッションを実現した。
また国際委員会初代委員長を務め国際会議ICEEやタイ合同シンポジウム,大韓電気学会(KIEE)対応に加えて,IEEE/PESやCIGREとの連携を見据えた部門国際活動の組織整備を行った。
部門大会論文委員長時にはコロナ禍初のオンライン開催に対し従来のYPC各賞に代わりYOC優秀発表賞・奨励賞を新設した。
このように部門の研究調査・編修・国際活動活性化施策に加え,学生や若手技術者の育成に資する施策を主導し,部門の各種活動を有機的・魅力的に展開・発信する活動に大きく貢献したので本賞に推薦する。


