用語解説 第187回テーマ:雷電磁パルス(LEMP)

2026/10/01

山中 章文 〔(一財)電力中央研究所〕

1. 雷電磁パルス(LEMP)の概要

雷電磁パルス(lightning electromagnetic pulse, LEMP)とは雷放電により発生する電磁パルスのことであり,おおよそ数百Hzから数百MHzまでの周波数帯の電磁波を含む。LEMPは,落雷位置の標定や雷放電の時間的・空間的な進展様相解明の研究などに活用されている(1)。その一方で,高圧配電線における雷事故や,電子機器などの破損・誤動作を発生させ得る現象でもある。また,架空線への雷撃により発生する過電圧にも,LEMPが影響を及ぼすことが明らかとなってきている。

2. LEMPにより高圧配電線に生ずる誘導雷(2)

帰還雷撃により生ずるLEMPは架空線に誘導雷を発生させる。誘導雷は,架空線近傍の大地や建物への雷撃によっても発生するため,架空線への雷撃と比べ発生頻度が高い。送電線と比べ絶縁レベルの低い高圧配電線では,かつては誘導雷が雷事故原因の多くを占めた。しかし,我が国では誘導雷現象の解明とともに,架空地線や避雷器などの耐雷設備の整備が進められたことから,現在では誘導雷による雷事故はほとんど発生しない。このため近年では,高圧配電線においても直撃雷対策が重要な検討課題となっている。

3. 架空線への雷撃におけるLEMPの影響

高圧配電線や送電線などの架空線への雷撃が発生すると,雷撃を受けた架空線に雷電流が直接流れ込むことで過電圧が発生し,雷事故に至る可能性がある。この一連の現象は,雷撃を電流源および雷放電路の等価インピーダンスで模擬することで,電気回路理論に基づき解析でき,耐雷設計や各種雷対策の検討に活用されてきた。一方,架空線への雷撃においても,LEMPに起因する誘導電圧が発生し,例えば送電線への雷撃により変電所に発生する過電圧に大きな影響を及ぼし得る(3)。近年では,計算手法の開発や計算機性能の向上により,架空線への雷撃においても LEMPの影響を明示的に考慮した解析が実施可能となってきており(4)(5),高圧配電線や送電線,変電所の雷対策に向けた検討が進められている。

 

文献

(1) 吉田 智:雷放電の物理-絶縁破壊から電荷分離,メソ気象まで-,朝倉書店 (2024)
(2) 雷リスク調査研究委員会 配電雷リスク分科会:「配電線耐雷設計ガイド (2023年改訂版)」,電中研報告,GD22016 (2023)
(3) 植田俊明・依田正之・宮地 巌:「77 kV 変電所で観測される侵入雷サージの特徴」,電学論B,Vol.116, No.11, pp.1422-1428 (1996)
(4) A. Tatematsu and T. Ueda : “FDTD-Based Lightning Surge Simulation of an HV Air-Insulated Substation with Back-Flashover Phenomena”, IEEE TEMC, Vol.58, No.5, pp.1549-1560 (2016)
(5) A. Yamanaka, K. Ishimoto, and A. Tatematsu : “Incorporating the LEMP impact on lightning surge analysis of transmission lines in EMT simulators”, IEEE TPWRD, Vol.39, No.3, pp.1918-1930 (2024)

【電気学会論文誌B,146巻,10号,2026に掲載】

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