用語解説 第188回テーマ:システム強度

2026/11/01

界 波 〔東京大学〕

1. はじめに

システム強度の概念は,「無限大母線(infinite bus)」の考え方にその根源を有する。電力系統において,ある母線が無限大母線とみなされる場合,その意味は二つの側面から構成される。第1に,当該母線に接続される一次機器の容量がいかに大きくなっても,その母線の電圧振幅は変化しないこと。第2に,接続機器の容量にかかわらず,その母線の電圧周波数は変化しないことである。このように,無限大母線においては,電圧振幅および周波数のいずれも,接続される機器の種類や容量の影響を受けない。一方,実際の電力系統では,任意の母線の電圧振幅および周波数は,接続機器の影響を必然的に受ける。この影響の程度を定量的に記述する指標がシステム強度である。

2. システム強度評価指標

システム強度は一般的に電圧支持強度と周波数支持強度に分解される。同期発電機が主流であった従来型電力系統では,電圧支持強度は通常,短絡比(Short-Circuit Ratio, SCR)により評価される。その定義は,接続母線(機器と系統の界面母線,すなわちPoint of Common Coupling, PCC)における三相短絡容量と当該接続機器の容量との比であり(1),ここでの三相短絡容量は同期発電機電源が寄与する短絡容量のみを指す。
周波数支持強度は,慣性支持能力と一次周波数変動制御能力の二つの観点から特徴づけられる。慣性支持能力は,系統が有効電力擾乱を受けた直後における周波数変化率(RoCoF: Rate of Change of Frequency)を記述する指標であり,従来型電力系統では全系統の同期機回転子に蓄積された運動エネルギー(単位:MWs)あるいは全系統等価慣性時間定数H(単位:s)により表現される。一方,一次周波数制御能力は,周波数偏差が発生した際に系統が吸収・供給し得る有効電力を表す指標であり,従来型電力系統では周波数偏差因子あるいは周波数特性定数(単位:MW/0.1 Hz)により記述される。これは,全系統同期発電機の調速器調差率および全系統の電力負荷の周波数特性定数に関連する。

3. Renewable-Rich型電力系統におけるシステム強度評価指標

しかし,従来型同期機電源中心の電力系統から,パワーエレ変換器を介して連系されるインバータベース電源(主に再生可能エネルギー電源)の割合が急速に増加する中,電力系統は再生可能エネルギー高導入型(renewable-rich)次世代電力系統へと移行しつつある。その中,電圧源型変換器(Voltage Sourced Converter,VSC)を介して連系される非同期機電源の割合が着実に増加している。このような状況下では,従来の短絡比をそのまま用いて電圧支持強度を評価することは不適切である。その主な理由は,従来の短絡比が同期発電機電源による短絡電流のみを考慮しており,非同期機電源の系統支持効果が反映されない点にある。また,非同期機電源の短絡電流を計算に含めようとすると,電流制限機構の影響により物理的意味を失うため,従来定義の継続は困難である。同様に,慣性支持能力の記述についても,従来の手法は同期機回転子の運動エネルギーに依拠するものであり,非同期機電源の慣性支持能力は制御器により決定され(例えば,grid-forming control,GFM 制御),運転点に応じて変動するため,固定された等価慣性時間定数Hの仮定は成立しなくなる。さらに,従来の周波数偏差因子も非同期機電源の一次周波数制御能力を考慮していない。
したがって,同期機電源と非同期機電源が共存するRenewable-Rich型電力系統においては,これらの指標の再定義が強く求められている。

 

文献

(1) 小出 明:用語解説「第174回テーマ:短絡容量」,電学論B-NL,Vol.145, No.9, p.6 (2025)

【電気学会論文誌B,146巻,11号,2026に掲載】

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