電気学会行動規範

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平成19年4月25日制定

〔前文〕

この行動規範は,「電気学会 倫理綱領」の理念の具体化を図るものであり,電気学会会員は,電気に関わる技術の研究,開発,利用および教育の実践に際して,自らの行動の道標(どうひょう)として活用していくことを宣言するものである。
道標という言葉は,この行動規範が,技術者倫理に関わる問題に直面する際の判断基準としての側面と,より良き行動を促す行動指針としての側面を併せ持つものであることを意味している。
電気学会会員は,電気技術に関する専門家として,社会からの信頼と負託に応える責任を自覚し,この行動規範に基づき,誠実にその役割を遂行していくことを誓う。

19世紀後半の揺籃期を経て,20世紀に開花した近代文明社会において,産業の発展と人々の暮らしの豊かさを担ってきた電気技術は,21世紀においても,社会システムの基盤を支える中核的な技術として,益々重要なものとなっていくことは明白である。絶え間なく生み出される革新的な技術やビジネスモデルのイノベーションも,利便性に富んだ電気技術を活用することを前提に開発・創造されるものが多く,電気技術は科学・技術の発達や新しい文明の創造に不可欠な存在となっている。
その一方で,急激な人口の増加を背景に,物質的に豊かな社会を追求する人々の願いを重ねあわせ,経済発展を優先した近代文明社会は,大量の資源・エネルギーを消費し,環境への負荷を増大させ続けてきた。エネルギー供給と人・物資の輸送等に関わる技術も,人々に多大な便益をもたらすのと引き換えに,大気汚染など地域的な環境問題から,気候や生態系への影響が懸念される温暖化など地球規模の問題にまで影響を与えている。現代社会はこれらを克服するための国際的な連帯・政策協調と技術開発ならびに自然と人類とが共生していくための環境倫理の確立が求められている。また,20世紀終盤に飛躍的に進化した情報通信技術は,情報の高度な活用を実現する一方で,プライバシー侵害や脆弱なセキュリティなどの問題を十分には克服できておらず,情報倫理の確立が危急の課題である。

このような中で電気学会会員は,電気技術の専門家としての自覚と誇りをもって,主体的に持続可能な社会の構築に向けた取組みを行い,国際的な平和と協調を維持して次世代,未来世代の確固たる生存権を確保することに努力する。また,近現代の社会が幾多の苦難を経て獲得してきた基本的人権や,産業社会の公正なる発展の原動力となった知的財産権を擁護するため,その基本理念を理解するとともに,諸権利を明文化した法令を遵守する。さらに,日常の様々な局面で契約を締結する場合,人類社会や環境に対して重大な影響を及ぼす事柄については,その内容を吟味し,社会正義実現の観点から,契約締結の是非を判断する。
電気学会会員は,自らが所属する組織が追求する利益と,社会が享受する利益との調和を図るように努め,万一双方の利益が相反する場合には,何よりも人類と社会の安全,健康および福祉を最優先する行動を選択するものとする。そして,広く国内外に眼を向け,学術の進歩と文化の継承,文明の発展に寄与し,多様な見解を持つ人々との交流を通じて,その責務を果たしていく。

電気学会を構成する個人会員は,この行動規範が,自律的な精神を有した会員の意識と行動とによって息吹を与えられるものであることを認識し,率先垂範する。
また,団体会員(事業維持員)は,この行動規範の趣旨を理解し,組織内の体制整備に努力する。
さらに,専門家集団としての電気学会自身も,その社会的な存在・役割を自覚し,他学会と連携して相談報告窓口を運用するなど,会員の支援を通じて使命を果たしていくとともに,学術団体として既成概念にとらわれない視点も大切にして,公益を優先・確保する立場で発言していく。

行動規範に,日常起こり得るあらゆる課題を網羅するのは不可能であるため,ここに収録されていない課題に対処する場合には,その趣意に立ち返り,人間として護るべき価値は何であるかを想い起こして行動する。
なお,いかなる規範も,それが形成された時代の社会情勢と価値基準の影響を受けるため,時代の変遷の中で,必要に応じて見直していくべきものであることは当然である。

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